第19話 勝利宣言

「は?? 今の当てるのまじ?? 強すぎ……」


 俺はAグループの試合が終わったので彩音の試合を見ていた。

 

(今のを覗かずに当てるの、弾丸の軌道を完全に読めてないとできないよな…… あいつどんだけの知識量あんだよ……)


 彩音の凄さを俺は改めて実感していると、彩音のインタビューが始まった。


「やー、さすがはアジア最強!! 4位なんて相手にもならないって感じの試合に見えましたが、どうですか??」


「そうですね、え…… えっと、勝てて嬉しいです……」


 彩音は緊張しているのか、声が若干震えていた。


(俺もさっき緊張して喋れなかったし、気持ちが分からんでもないな……)

 

「そうか!! 流石に嬉しいよな!! ありがとう!! 以上、あちゃんでした〜!!」


 彩音のインタビューが終わると、運営からメールが届いた。

 メールを開くと、Aグループの結果が出ていた。


「まあだよね、わかってた…… 有栖ちゃんかレインだろうとは思ってたよ」


 結果を見ると、有栖ちゃんが決勝の相手だった。

 予想通りの結果で逆になんか気分がいいまである。


(つーかレインのやつ…… 招待枠なのに対戦ログないし、寝坊したのか参加してすらないのか……)


 前回のランキングで俺と彩音とレインで1位争いをしていた。

 レインは彩音のクランの次に有名なクラン『ナイト』のリーダーだ。


 ナイトは実力主義のクランで、レインが弱いと思った仲間は切り捨てるという、強者だけが生き残るデスゲームのようなクランだ。

 

 (クランの3人は予選落ち、まあレインのワンマンチームみたいなとこあるしな……)

 

 そんなことを考えていると、Bグループの2回戦が始まった。

 対戦カードは70位VS20位、見るほどでもないとは思ったが他にすることもないし配信を見ることにした。


「お腹すいた〜」


 あれから3試合観戦して、ようやくAとBの決勝と最終戦のみになった。

 Aは俺と有栖ちゃん、Bは彩音と美佳ちゃんというなんというか身内戦みたいな感じになった。


「緋奈ちゃんは…… って美佳ちゃんと初戦だったのか、なるほどな……」


 この間のリベンジをしたかったが、まあ仕方ない。


「つか、彩音はバケモンクラスだからあれだけど、あの子達もTOP10だし、やっぱ他の参加者と格が違うんだな……」


 俺がトーナメントを見て独り言を言っていると、こんこんとドアを誰かがノックした。

 お母さんは出かけているので、恐らく彩音だと思ってドアの前に行った。


「彩音か、どうした??」


 俺がドアを開けると、彩音がエプロン姿で俺の部屋の前にいた。


「お兄ちゃん、お昼ご飯のサンドイッチ作ってみたの、食べない??」


「あ、ありがとう」


 俺は彩音に手を引かれ、茶の間に行った。

 茶の間に着くと、そこには野菜のサンドイッチや卵、イチゴなど様々な種類のサンドイッチがお皿に盛り付けられていた。


「ていうか、最終戦から10分くらいしか経っていないのに、こんな料理作れるんだ……」


「あ〜いや、これは早起きして途中まで作っておいたやつだから、そんなに時間かからなかったよ〜」


 彩音はそう言って、3種類のサンドイッチを取り皿に分けて俺の前においた。


「彩音は本当に料理が上手だな……」


「そう?? これはお母さんに教えてもらったんだよ〜」


「へ〜 母さんが…… まあいただきます」


「どうぞ召し上がれ〜」


 これから殺し合いをするであろう2人の空間とは思えないような空間だ。

 俺は卵サンドを手に取って、口に運んだ。


「美味しい……」


「良かった〜 早く起きて用意して良かったよ〜」


 彩音は笑顔でそう言った。

 おそらくこの後、俺を銃で倒す少女とは思えないような笑顔だ。


「そういえば…… この後勝つと、俺たちは決勝で戦うと思うけど 自信はある??」


 俺はイチゴと生クリームの入っているサンドイッチを食べながら彩音に質問した。


「ん〜 どうだろう…… 正直自信ないかな〜」


 今までの圧倒的な勝利で勝ち上がってきた彩音にしては弱気な返事で意外に思った。


「それはどうして??」


「だって、日本で1番個人技が強いっていう、お兄ちゃんが相手だもん」


「え……」


 俺はその事を聞いて、食べていたサンドイッチが喉に詰まり水を飲んだ。


「大丈夫?? お兄ちゃん」


「うん…… アジアで最強の人に認めて貰えて、嬉しくて思わずビックリしただけだ……」


 俺がそう言うと、彩音はふふっと笑った。


「私だけで掴んだ称号じゃないけど、そう言われるとなんか照れちゃう……」


「まあ、称号を貰ったのは彩音なんだから、そこは誇ってもいいと思うよ」


 俺が彩音を褒めると彩音は嬉しそうな表情をした。


「だが、頂点にいるのも今のうちだけだ!! この大会で俺が彩音に勝つからな!!」


 俺は彩音に宣戦布告をし、手を銃の形にして彩音の頭にくっつけた。


「なんかお兄ちゃん、昔みたいに楽しそうだね」


「まあね、ランキングの時は負けてばっかだったから今回は勝つ」


 俺が彩音に勝利宣言すると、彩音も右手を銃の形にして俺の頭にくっつけた。


「私も負けないよ!! じゃあお兄ちゃん、決勝で!!」


 そんな話をしていると、試合の10分前に設定していたアラームがなった。

 俺たちは食べ終わった食器を食洗機に入れて、お互いの部屋に向かった。

 





※後書き

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