第15話 わからせてやるか……
「……」
大会の1日前の金曜日、俺はメッセージアプリの通知の量がバグっていた。
彼女らと繋がりは外から知られるのはまずいので、彩音伝えで3人とメッセージアプリのアドレスを交換したが、緋奈ちゃんから数100件ほどのメッセージが届いていた。
メッセージを開くと『タイマンで勝負しよう!!』とだけ、ひたすら送られていた。
(中学校は3時に終わるけど、こっちは家に着くの4時なんだから、返信できるわけないだろ……)
「はぁ…… まあ子供だし仕方ないか……」
俺は緋奈ちゃんに『今暇だからいいよ』とメッセージを送った。
メッセージを送ると、一瞬で既読になった。
「いや、既読はや……」
既読の速さに驚いていると、緋奈ちゃんから通話がかかってきた。
俺は通話アプリをパソコンで開いてヘッドホンのマイクを起動した。
「にいちゃん、おかえり〜 ご飯にする?? お風呂にする?? それとも……」
「興味ないんで、そういうの」
「ちぇ〜」
俺が緋奈ちゃんの話を途中で遮ると、宇佐見さんは残念そうに言った。
「んじゃあさ〜 私の勇姿を全世界に配信してもいい??」
「それは一番ダメ!!」
俺は配信しようとした緋奈ちゃんを咄嗟に止めた。
「いや〜 じょーだんだよ〜」
「……」
「なんかにいちゃんっていじられキャラだったりする??」
「ちげぇわ!! いいからかかってこい!!」
俺をからかう緋奈ちゃんに、俺はプライベートマッチの招待を送った。
ルールはオーソドックスな、撃ち合いモードの1本勝負にした。
「ボコボコにしてやるよ〜 にいちゃん!!」
「命知らずが…… 『最強』を見せてやるよ……」
緋奈ちゃんが招待を承認し、プライベートマッチが始まった。
(さて、今回のマップはニュータウンか…… やっぱ撃ち合いモードならここが一番おもしろい)
ニュータウン、東京のような街並みの廃ビルや駅などがあるマップだ。
一部の建物に入ることができて、さまざまな戦い方ができて人気がある。
俺はこのマップで一番高いビルの上に登り、アサルトライフルを構えて周辺の確認をした。
「駅の回復アイテムがあるとこは回収されてない…… あそこ速攻で行くと思ってたけど、さすがに行かないか……」
このゲームの撃ち合いモードには、回復手段が少ない。
最初から持っている数少ない薬もすぐになくなるし、それに駅とビル内のどこかにランダム出現のアイテムは回復量が2倍なので、勝敗を大きく変える。
俺が周辺の警戒をして下を見ていると、何か違和感があった。
(なんだ?? あれは……)
俺は自分のいるビルの下に何か小さなものが落ちているのが見えた。
スコープで見ると、それは腕を弾丸から守るように最初から装備されているものだった。
それを確認した瞬間、俺は後ろにある非常口の方を向いて武器を構えた。
(緋奈ちゃんのキャラは現実と同じ感じに作っていたから軽量キャラ…… 装備外せばここの外壁を登れる)
このゲームはチート対策で、アカウントを作る際に顔認証が必要のため現実世界の顔と近いアバターになる(一応身バレ防止観点からか、少しは変えることができる)。
思った通り、緋奈ちゃんは非常口の裏から姿が見えた、
「やっほ〜 にいちゃん、んじゃ倒すね〜 ってあれ?? 気づかれた〜??」
俺は緋奈ちゃんの頭が出た瞬間、アサルトライフルを連射した。
緋奈ちゃんは、俺の放つ弾丸をジャンプして避けて腰に装備していたハンドガンを2本取り出した。
「さっすが上位プレイヤー、置きエイムしてても全弾避けるか……」
「ま〜ね!! いっくよ!!」
緋奈ちゃんの放った弾丸を俺は貯水タンクの裏に隠れて避けた。
「ありゃ、避けられた 逃げんなにーちゃん!!」
「逃げてないわ!! 2丁拳銃相手にこの距離で戦うのは無理だろ!!」
俺は物陰から顔を出して、アサルトライフルのスコープを覗いた。
足音が全くしないので、さっきの位置を見るとその位置からグレネードが5つくらい飛んできた。
「ちっ……」
俺は舌打ちをして、ビルの屋上から飛び降りた。
貯水タンクの前が大爆発し、爆発の衝撃でビル全体が揺れた。
俺は4階下の階層にあるベランダのような場所にしがみついた。
「あっぶね…… 死ぬかと思った……」
(爆弾魔って言われてるからグレネードに警戒していたが、まさか5個持ちで全部投げてくるとは……)
俺は装備の耐久値を確認した。
防弾チョッキの耐久はもう2%、つまり2発攻撃を受けた時点で即死してしまう。
(……さて、本気出しますか〜)
俺はアサルトライフルをリロードし、回復アイテムを使ったのち階段を登って屋上に向かった。
屋上に着いてドアを開けた瞬間、少し離れた位置から弾丸が飛んできた。
「あれ?? にいちゃん出てこない」
俺はドアを蹴って外側に開いた瞬間、階段のほうに飛び込んで銃弾を回避した。
緋奈ちゃんがリロードするタイミングに合わせて、俺はスモークグレネードを放った。
「けほっ…… う〜、何も見えないよぉ……」
緋奈ちゃんは足元のスモークグレネードを蹴って、ビルの屋上から落とした。
俺はその隙を逃さず、走って距離を詰めた。
走っている途中、緋奈ちゃんは体制を立て直して俺目掛けて2丁拳銃を打った。
俺は壁を高速で走って弾丸を避けたのち、アサルトライフルを地面に向けて3発打ち込んだ。
「どこ撃ってんの?? にーちゃんの負けだよ!!」
緋奈ちゃんは、ゆっくりをリロードをした。
俺の銃は再装填まで時間がかかるが威力が高い、そのことを知っているからこその余裕だろう。
「いや、最初っから君に銃弾を当てるのは難しいってのはわかってた…… だからこの戦い方が正解だ」
俺はそういい、地面に拳を勢いよくぶつけた。
屋上の地面に亀裂が入った。
「え?? きゃあああああああああああ」
俺と緋奈ちゃんは屋上の地面がなくなり、下の階へ落ちた。
※後書き
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