第12話 友達が妹のファンだったんだが……

 キンコンカンコンとチャイムが鳴り、午前の授業が終わった。

 

「なあ、悠也!! いっしょに食堂行こうぜ!!」


 東寺が後ろから俺に肩を組ませながら言った。

 

「お、おう…… 行こうか」


「おうよ!!」


 俺たちは財布を持って、食堂へ向かった。

 向かっている途中、東寺がスマホを僕に見せた。


「俺さ、最近ゲーム配信にハマってるんだよ」


「へ〜 ドラレンの配信とか見るの??」


 俺が聞くと東寺がスマホを見せてきた。


「最近はこの癒し系の配信者『あ』ちゃんだな〜」


「ぶっ……」


 俺は思わず歩きながら飲んでいた水を吹き出してしまった。


(嘘だろ…… なんで彩音のチャンネルを……)


「おいおい、俺が可愛い女の子の配信を見ているのがそんなに面白いか〜」


「いや、普通に喉に詰まっただけ…… にしても意外ではある」


 まさかの彩音の配信を見てるとは思わなかった。


(FPSゲームをやってない東寺ですら配信を見るなんて、さすがは有名配信者だな……)

 

 そんなこんなで歩いていると、俺たちは学食についた。


「所持金は1000円か…… 東寺、なんかおすすめってあるか??」


「そーだな 無難に味噌ラーメンとかいいんじゃない??」


 俺は東寺におすすめされた味噌ラーメンの食券を買って、食堂のおばさんに渡した。

 東寺も俺と同じものを頼んで、自販機の近くで完成を待っていた。

 数分後、味噌ラーメンが完成して僕たちは呼ばれた。


「はいよ、味噌ラーメン2つね〜」


「どうも」


 俺たちは味噌ラーメンを持って座れる場所がないか探し回った。

 食堂はたくさんの人がいて、なかなか空いてそうな席がなかった。


「混んでるな……」


「悠也、今更だがどっちか席取っとけばよかったな……」


「そうだな……」


 僕たちが半分諦めて歩き回っていると、食堂の裏側の席が空いていた。

 そこの席は4人用の席で、少し広い感じがあった。


「お、ラッキー ここにしようぜ」


「うん」


 僕たちは椅子に座って、ラーメンを食べ始めた。


「うめ〜 俺はこのために学校へ来てる〜」


「おいしいな、このラーメン」


 俺たちはラーメンを食べ進めた。

 食べ終わると、東寺は俺にスマホを見せた。


「最近俺、さっき言った『あ』ちゃんにハマっているんよ」


「うん」


「んで、俺はこのFPSゲームやってみたいけど、俺パソコン持ってないんだよな〜」


「まあ、確かにゲーム用パソコンって高いよね」


「そうなんだよな〜 早くスマホ版出てくれ〜」


「まあ気長に待とう」


「うん」


 僕たちが話していると、俺の携帯でSNSの通知が来た。

 なんだろうと思い、スマホを開くとそこにはFPSの大会の招待状だった。

 招待されたことに嬉しくなっていると、東寺が俺のスマホを見た。


「あれ、お前ってあのFPSゲームやってたんだ」


「まあな、ぼちぼち……」


(身バレ怖いから、詳しいことは黙っておこう……)


「なるほどな〜 やっぱり面白いか??」


「まあ、初心者だけど 面白いよ」


 僕は初心者だと嘘を言ってしまった。


「そーなのか、さっきのあれてっきり大会招待ぽかったけど、ゲーム広告かなんか??」


「あー そういう感じのやつ」


 俺は適当なことを言って、誤魔化した。

 俺たちが話していると、授業開始10分前の鐘がなった。


「もうそんな時間か…… まあ今度家に呼んでくれよ、FPSやらしてくれ〜」


「うん いいよ」


 俺たちはラーメンの器と御盆を持って食堂のおばさんのところへ持って行った。

 返却棚に置いたのち、俺たちは教室へ向かった。

 歩いている途中、東寺が俺に質問した。


「お前って、推し配信者とかっているの??」


「いや…… いないかな……」


「なら、お前も『あ』ちゃん推しになろうぜ!! そうした方が人生豊かになるぞ!!」


「お、おう……」


 僕はまさか東寺が自分の妹のファンで、しかも熱狂的な感じでなんというか複雑な気分になった。

 

(それにもとは俺も推しだったなんて言えない……)


「まあ帰ったら、俺のおすすめ配信のURL送っから見てくれよ〜」


「わかった 帰って時間がある時にでも見るね」


 僕たちは教室について、次の時間の科学の教科書を用意した。


 机の上に用意ができて、少し時間が余っていたので僕はスマホで大会についてのメールを開いた。

 途中で東寺にスマホを覗かれたのでよく見えなかったが、予想通り国内のEスポーツ大会運営会社からのメールだ。


(なになに、大会は1対1のバトルモードか…… よし、俺の得意分野だ)


 俺は大会が個人戦だとわかって嬉しくて、思わず小さくガッツポーズをした。


 基本的にソロしかやらない(友達がいない)俺にとってタイマン大会となれば敵なしだ。


 招待メンバーはアジア個人ランキングの上位32人で行われるみたいで、敵も相当な実力で楽しくなってきた。


(開催は再来週か…… 学校のテストの2日後だし、短期間でみっちり練習しないとな……)


 幸いなことにテストの日に被ってなくて本当によかった。



(それに、俺はこの大会で彩葉に勝って俺がアジアで最強だってことを全世界にわからせる!!)


 そんなことを考えていると、科学の教師が入ってきて科学の授業が始まった。







※後書き

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