第2話 恋愛バトル(下)

それからというもの。

俺はリラの為に絵空と一緒に動いた。

リラはずっと俺について来てくれて.....感謝しかない。


そんなリラに異変があったのは来てから1年目の事だった。

俺が28歳になった時だ。

尻尾が下がって俺をチラチラ見るリラが居た。

何だ?


「.....菅生さん。.....何だか胸が熱いです」


「.....胸が熱い?それは.....苦しいのか?」


「はい。.....何だか半年前には無かった感情です」


「.....か、感情?」


俺はビックリしながらリラを見る。

この1年でリラは羞恥心などを覚えた。

俺に対して恥じらいとか。

それから今に至っているがでもその中でもそんな事を言われたのは初めてだ。

つまり何か体調が悪いのだろうか。


「.....大丈夫?」


「.....はい。.....その。.....菅生さんを見ていると.....胸が灼熱の様に熱くなります」


「.....?.....俺なんか見てもどうしようもないけど.....」


「.....私、どうかしたんでしょうか。.....何故か菅生さんが.....愛しく見えます」


「.....」


ま、まさか、と思いながら俺は顔を引き攣らせる。

そして、それは.....でも。俺なんかに向けても仕方がないぞ、と慌てる。

それからスマホを置く。

すると、菅生さんは何か知っているのですか?この感情、と知りたそうに向いてくるリラ。

俺はボッと赤面しながら、そ、そうだね.....、と悩む。


「.....えっと.....その感情は知ってる。.....何かを。でも当てはまるかどうか.....」


「.....教えて下さい。この感情は何ですか?」


「.....俺が好きって事だ」


「.....ふあ?」


まさかの言葉だった様だ。

真っ赤になるリラ。

それからモジモジしながら俯く。

スカートを触りながら沈黙してしまった。


活動停止!、的な感じで。

そして1分が経った頃。

リラが涙を浮かべて顔を上げた。


「.....そ、そんなの良くないです」


「.....?.....何が.....」


「.....私、裏切る事になります」


「.....裏切るってのは.....」


「絵空さんに申し分が立たないです」


「.....!」


リラは、こんな感情は捨てないといけないです、と言いながら胸に手を添える。

俺はその姿を見ながら顎に手を添える。

そして俺は電話を掛けた。

その相手は.....当然だが絵空だ。

すると休みだったので絵空が直ぐに出る。


『はいはーい』


「.....絵空。.....重大な話がある」


『え.....もしかして別れ話?別れないよ?』


「.....違う。それよりも深刻だ」


『.....え!?何.....!?』


「リラが俺を好きになった」


その事を重苦しく伝えるが。

絵空は、何だ。そんな事?、と軽く返事をした。

え!?何でそんなに軽いんだよ!?

俺は衝撃を受けていると。

絵空は、大体は察していたから、と回答した。


『.....結構前から気付いていたから』


「.....そ、そうなのか.....」


『リラは優しい人が好きって事だよ。.....それで貴方に惹かれたんでしょう』


「.....そ.....そうなのか」


『そう。だから予想していた。.....でもリラはその感情に気付いているの?』


「.....ああ。.....まあそうだな」


『.....そっか。.....じゃあ今日からライバルだね』


え?お前はそれで良いのか?、と言う俺。

すると絵空は、私はリラも好き。君も好き。.....だけどこのまま君を奪うつもりはないからね、と笑顔の様に答える。

リラがせっかく好きになったんだから、と言いながら。


「.....絵空さん.....」


リラは号泣し始めた。

俺はその姿を見ながら頭を撫でる。

すると、もしかしてリラはそこに居る?、と聞いてくる。

そうだな、と答えた。


『リラ。聞いて。.....中途半端な感情じゃないかって思われたくないから。私は菅生くんが好き。.....世界で一番好き。.....でも貴方も菅生くんが好きなんだよね?私は譲ったつもりも無いからね』


「.....はい」


『.....だけど.....貴方にもチャンスを与えたい。.....だって私の認めた女の子だし』


「.....」


涙を浮かべながら、はい、と涙声で回答する。

それから絵空は、泣かないで、と言った。

私は貴方に出会えて良かったって思ってる。

それに絶対にこのバトルは負けないよ、とニコッとする様な感じで言ってくる。

貴方はどうかな、とボルテージを上げる様な言葉を発した。


「.....私は.....菅生さんがで好きです。.....大好きです.....だからこそ.....苦しかった。でも貴方にそう言われて私はとても幸せです」


『よしよし。その意気だよ。.....という事で良いかな。菅生くん』


「.....い、いや。俺は.....」


『もー。菅生くん。私は死んだ訳じゃ無いから』


「いや.....まあそうだけど.....」


何という事でしょうか。

まさかこんな事になるとは、と思う。

それから、じゃあ今から菅生くんの所に行こうって思っていたから、とそのまま電話を切る絵空。

俺はスマホの画面を戻してからリラを見る。


「.....そっか。私は.....菅生さんが好きだったんですね」


「.....そうだな.....お前が好きになるとはな。俺を」


「.....それはそうですよ。.....だって菅生さんは.....私の命の恩人でもあり。.....世界を広げた人でもあります.....。好きにならない方がおかしいんじゃないでしょうか」


「.....そう.....か」


「.....で、でも.....意識をすると.....何だかかなり恥ずかしいです」


リラはそっぽを向く。

まるで新婚の様であった。

俺達は顔を見れなくなっている。

困ったな、と俺は思いながらリラを見てふと思う。


「.....そういえばリラ。その姿からもう1年近く犬になってないが.....どうしたんだ?」


「.....あ。それはですね.....犬に変身するのを止めたんです」


「.....え?それはまた何故?確か前に聞いた言葉によると.....自由自在だったよな?変身は」


「全ては貴方のせいです」


「.....え?.....あ」


俺は察して真っ赤になる。

つまり.....俺が好きだから変身しないのか.....、と。

するとリラがいきなり俺に寄って来た。

そして俺を見上げてくる。


「私は貴方に出会って色々な事を知りました。.....だからもう私は犬に戻る必要は無いんです」


「.....は、恥ずかしいって.....」


「.....菅生さん。私は.....」


真っ赤になって見つめ合う俺達。

するといきなり俺の部屋のドアがガチャッと開いた。

それから、はい。ストップ、と声がする。

それは絵空だった。


「リラ。男はケダモノなのよ?.....そんな簡単にキスをしようとしたら駄目だよ」


「き、キス!?」


「.....菅生くんも止めないと」


「.....と、止めようとしたけど.....」


ふーん.....?

怪しいなぁ、とジト目になる絵空。

そしてジッと見てくる。


俺はその姿を見ながら.....苦笑いを浮かべる。

というか何をしに来たんだ?、と言う。

すると絵空は俺に向いてウインク。

え?


「それは勿論。リラちゃんに教える為だよ」


「.....な、何を?」


「恋の話術」


「.....ふぁ?」


真っ赤になるリラ。

そしてまた俯く。

俺はその姿を見つつ絵空を見る。

リラは恋愛初心者だろうしね、と言いながら小さなホワイトボードを取り出して伊達メガネを掛ける。

良いのかお前は.....?


「なあ。絵空」


「.....何かな?」


「本当に良いのか?これで」


「.....これって?.....私は後悔も何も無いけど」


「.....!」


絵空は、寧ろ君がここまで愛されているのが嬉しいよ、とニコッとして話す。

俺はその姿に。

やれやれ、と思いながら苦笑する。

相変わらずだな、と思いつつ。

そのまま俺達は見合う。


「.....じゃあ受けましょうか。菅生さん」


「.....そうだな。リラ」


2人の恋愛バトルが始まる。

だけどまあ。

そこら辺の恋愛バトルより。

少しだけ奇妙な恋愛バトルだが。


fin

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深夜の散歩で起きた出来事 〜ラブコメ?〜 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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