僕は、いつでも勇敢だ。KAC20234

裏耕記

一人きりの探索隊

 真っ暗で静かな家。


 いつもは夜遅くに起きられないけど、たまにトイレに行きたくなって起きちゃう。

 僕はもうトイレに行くの怖くないから、起きた時は、ワクワクの冒険の時間に早替わり。


 せっかく夜中に起きたんだからトイレに行くだけじゃ勿体無い。



 暗い廊下を抜けて、目的地に着く。

 その奥には、普段触れない扉があって、お宝が僕を待っている。


 扉を開けると、眩しいくらいに光輝く。

 中にはお宝がいっぱい。


 普段、お母さんに一杯しかもらえないオレンジジュース。

 ちゃんとご飯を食べないともらえないアイスクリーム。


 だけど、お母さんが目を光らせてるから、いつもは勝手に開けられない。

 でもみんな寝てるこの時間なら、僕を止める人はいない。


 アイスクリームなんかは食べたらゴミが出てバレちゃうけど、ジュースならバレない。


 そーっと、ドアを開けてジュースのパックを取り出す。

 ここでコップを使っちゃいけない。

 コップがあったら何か飲んだのがバレちゃうからね。


 注ぎ口を開けたら、口をつけてグビっと一口。うん、美味しい。もう一口。


 お母さんは、お行儀が悪いって怒るけど、このジュースは僕しか飲まないし、気にしない。

 それよりもお母さんにバレないことの方が大事。



 良し。ミッション成功!

 後は静かに部屋に持ったら完璧だ。


 しまった。

 宝箱の光が眩しすぎたから、電気をつけてない部屋の様子がわからなくなっちゃった。

 ゆっくり進もう。


 一歩、二歩、三歩。良し、いいぞ。

 キッチンを抜けて、寝る前まで遊んでたリビングにまで来れた。


 ゆっくり音を立てないように慎重に。

 さあ、リビングの出口はもうすぐだ。


 なのに……グギッ。


「いっ、いったーい!」


 思わず声が出ちゃった。

 急いで口を塞いだけど、聞こえてないかな。


 犯人は今日遊んでたブロック。


 片付けなさいって言われてたのに、片付けなかったやつ。

 これからはちゃんと片付けよう。


 ミッション成功のために必要だ。



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