第36話 いっけなぁーい、遅刻遅刻!

「やばいやばい!遅刻だ!!」


完全に寝坊した。

絶対無限終わったあと寝れなくて別ゲーやってたからだ。


約束の10時に対し、今は9時50分。

そして、約束の場所には急いでも20分はかかる。


俺は朝食のパンを咥え、ショルダーバッグを身につけ勢いよく家を飛び出した。

髪も服もボサボサだが特に気にしてはいない。

もちろん普段からそこまで気を使っていないのもあるがそもそも今回の約束の相手は昔からの親友である奏多だ。

恥ずかしさなど無かった。


パンを口に咥え、ただひたすらに走る。

家を出てすぐの信号を待ち、その側の角を右に曲がる。

俺が角を曲がったその時だった。


「うわぁ!!」「きゃあ!」


同じく反対側から角を曲がってきた女性に思いっきり衝突してしまった。

お互いが少し後ろに弾ける。


「すいませんでしたぁ!!」


俺は彼女に一礼だけしてまた走り出した。

頭には奏多に怒られるということしか無かったのである。


「……」


彼女は状況を理解していない様子で走り去る了を見えなくなるまで眺めていた。


「あの人は……わん…?」


ぱっちりとした美しい目の彼女は、そう呟いた。


~~~


「ごめん寝坊した!奏多まじごめん…」


例の場所へやっとの事で辿り着いた俺はそのままの勢いで奏多に土下座した。


時刻は10時6分。

かなり巻いたが6分遅れだ。


そもそも俺がこんなに急いでる理由はただ1つ。


奏多が時間にとても厳しく遅刻したやつには相当な仕打ちをするからである。


半年前…くらいだろうか。

その時も今日と同じ感じで寝坊して奏多に怒られた。

当時はそんな事今まで無かったから少しちょけて誤魔化そうとしたけど無理だった。


その時の仕打ちは飯を奢らされるというものだった。


これを聞いたみんなは抵抗すれば……と言うかもしれないがそれは無理だ。

明らかに悪いのはこっちだし何より奏多には1つかなり大きい貸しがある。

その手前俺はなにも言えなかったのだ。

まぁそれで許してくれて仲良くしてくれるのだからいいのだが……。


「あのさぁー……」


椅子に座り、足を組みながらスマホを見ていた奏多がスマホを置き、俺の目線に腰を下ろした。


「そんなん良いから早く話さね?」


ニカッと笑った奏多はキラキラした子供のような目をしていた。


「俺あのツイート見てから興奮が止まらんのよ。了も分かるだろ?」


怒られないのかとほっとした俺は立ち上がり、テーブルを挟んだ奏多の向かいに座った。


「ごめん、あのツイートって何?」

「何って…知らないのか!?あのツイートってのは……」


俺は生唾を飲み込んだ。

奏多は俺にスマホの画面を見せて言った。


「これだよこれ!」


その画面には無限の公式アカウントの……



〖ゲンテンオブムーンクエイク公式

本日、10人目のプレイヤーがEXボスに辿り着きました。

これより、無限システムを開始致します。

現在のクリア率……2%〗



という文と共に1つの動画が添付された、一昨日のツイートがあった。


--続く

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