第34話 ボスとの対峙、違和感
壁の色より少し暗い石のブロックでできた体で人の形にかなり近い風貌になっている。
こいつがこのダンジョンのボス……ゴーレムか。
俺よりも少し大きいくらいのこいつは、今にも襲ってきそうな禍々しいオーラを放っている。
ゴーレムは1体、それに比べ俺たちは2人。
ここに来るまでに数々のモンスターをなぎ倒してきた俺には勝てるという自信があった。
メイと目を合わせ息を揃える。
「さ、行くぞ!!」
俺たちは同時に向かっていった。
「うおぉぉぉ」「はぁ!『破壊』!!」
俺は飛び上がり左肩から剣を振り下ろし、メイは正面に拳を入れた。
「ギギギ」
「何っ!?」
俺の攻撃は確実にゴーレムの体を捉えたはずだが、ダメージを与えたという感触がない。
それどころか逆に俺の手が痺れた。
硬いものを物で殴ったら痺れるあの現象だ。
しかし、一方のメイが攻撃した箇所は拳の凹みが出来ている。
「これ勝てますよ!」
「ギガガガ」
「メイ危ない!」
ゴーレムの腕がメイに振り下ろされた所を間一髪で回避できた。
「ガガギギガ」
休む暇もなくゴーレムの突進がやってくる。
攻撃が来た時に回避したのでさっきまで少し距離があったのだが、その距離は一瞬で詰められてもう目の前である。
こいつ…早すぎだろ……
肉塊が弾け飛ぶ音がダンジョン中に響き渡った。
-GAME OVER-
目が覚めるとそこは見慣れた場所。リスポーン地点だった。
そうか。俺は死んだのか…
それにしてもあいつ…全く目で追えなかった。
あんなに大きな図体してるのに早いとかズルいだろ。
これがボスか……
「クソっ…」
俺は地面を思い切り殴った。
「あ!やっと来た!」
項垂れて下を向いていた顔を上げると、そこには王子が立ってこちらを眺めていた。
「全然帰ってこないから一旦ゲーム辞めようかなって思ってたとこだよ〜。1人で帰ってきたって事はわんも死んだんだね」
王子は俺が今まで見てきた王子となにも変わらない普通の様子で喋っている。
でも…あんな事言う奴なんだよな……
メイから聞いた王子の言葉が俺の心に突き刺さる。
思い出すと気持ちがどんどん沈んでいく。
これからのこともあるしやっぱり話とかないとダメだよな…あんまり乗り気はしないけど…
「あのさ…王子は俺とクエストやりたくないの?」
自分でもこんな聞き方せこいと思うが咄嗟に出たのがこの言葉だった。
こんな自分がまた嫌いになる。
「……」
王子は1呼吸置いて俺の目を見て答えた。
「……え……何…?もしかして私なんかやっちゃった!?」
あたふたした様子でシラを切っている。
こいつ分かってないのか?今どんな状況なのか。
「あ…1番に死んじゃった事?それはまじでごめん!トラップが2重で来るなんて思ってなかったからさ」
「はぁ?トラップが2重?何言ってんのさっきから」
なんか話が噛み合ってない気がする。
だが、俺の気持ちから来る言葉はもう止まらなかった。
「言い訳すんなよ!お前が足滑らして勝手に落ちたんだろ?」
その言葉で今までの少しおちゃらけていた王子の雰囲気が変わった。
「え?どういう事?私が落ちたのは……
--続く
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