第33話 彼女の母性、ボス
「メイ!落ち着いて!何があったのか説明してくれない?」
俺が肩をさすったことで少し落ち着きを取り戻してきたメイは、俺の目を見てゆっくりと説明をしてくれた。
「わんさんが渡ってる時に王子さんと話してたんですよ。王子さんが『わんって肝心な時にダメだよね』って笑いながら言ってたんです。その話を私の方を向いて歩きながらしてたんで王子さん穴を見てなくて…それで……」
メイがまた泣き出してしまった。
俺も泣きそうな気持ちをグッと抑えてメイをなだめる。
正直ショックだった。
信頼してた。仲間だと思ってた。
やっぱり俺は仲間なんて……
視界が涙でぼやけてきた。
俺は…俺は……
「大丈夫ですよ。私がいますから」
先程まで泣いていたメイが俺を抱きしめてくれた。
母のような温もり、そのせいで俺は涙が溢れそうだった。
~~~
ふぅ、少し落ち着いた。
王子の発言については後で本人に聞いてみよう。
そうじゃないと…心の整理がつかない。
「ごめんねメイ。ありがとう」
「全然です!私が出来ることならなんでも言ってください!」
メイはそう言って俺の腕を組んだ。
腕に柔らかい感触が伝わる。
「じ…じゃあ行こうか」
俺たちはまた進むことにした。
トラップには細心の注意を払う。
「ウ゛ウ゛ウ゛」
ゴブリンだ。
4匹だろうか。いや、奥にももう少し見えるな。
「メイ行ける?」
「はい!」
メイと背中を合わせ、確実に1匹ずつ捌いていく。
いきなり2人になったから連携が崩れることもあったが、さっすがは特殊装備。
軽く交わしさえすればダメージは全く入らなかった。
着物という見た目とは裏腹にとても動きやすい。
これが本来の特殊装備かと実感した。
スライムヘッドとは何だったんだ。
「『破壊』!これで最後っぽいです!」
「おつかれ〜ダメージは?」
「ちょっとだけです!回復もいらないくらいの」
「了解!進もうか」
その後の道中も現れたスライムやゴブリンをなぎ倒していく。
もう何回曲がったか覚えていない。
そのくらいたくさん進んだ気がしていた。
この調子で行けばクリアももしかしたら……!
「なんかさっきより暗くなってません?しかもめっちゃ向こうに光が見える…」
!?!?
遂に来たか。
前回俺が為す術なく一瞬でやられた奴。
「メイ備えろ。……ボスだ」
気がつくとここは狭い一本道ではなく広くて丸い大きな部屋のような場所になっていた。
周りが暗くなって一本道だと思い込んでいたがいつの間にか部屋に入っていたようだ。
「わんさん……絶対勝ちましょう!」
「あぁ分かってる!」
その時、背後に大きな気配を感じた。
前回も感じたとてつもない気配。
これは…確実に"あいつ"だ……!
俺たちは意を決し、後ろを振り返った。
「ギギガガガ……」
視界の中心に文字が表示された。
"イクシードの
ボス…ゴーレム
出現!!!
--続く
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