第32話 謎の無敵感、穴

「そういえば特殊装備って普通の装備と何が違うんですか?特殊装備って何が良いんですか?」


言われてみれば確かにそうだ。

俺もクラウンに説明されたもののあまりぴんと来ていなかったのだ。


「特殊装備はね…見た目がかなり自由に作れるっていうのもあるんだけど1番はやっぱりその性能だね。装備ってのはステータスが強化されるんだけど、特殊はそれに加えてに追加効果が与えられるんだよ」

「追加効果?」

「うん。例えば魔法耐性〜だったり暗視〜だったりだね」

「この着物はあるの?」

「もちろん!全部あるよ。この着物…名前が"紅き振袖"追加効果が火炎耐性Lv2らしい」

「なるほどね」


つまりクラウンの説明不足だったって事ね。

あいつ絶対こんな事言ってなかったもんね。

まぁ説明の時適当に聞き流してたんだけど。


「じゃあ装備も整えたことだしまた挑みますか!」


1度打ち砕かれた自信だったのだが、俺達には無敵感が未だにあった。

それはやはり強い装備を身につけたことに他ならないだろう。


俺たちは2回目の挑戦を始めた。


酒場へ行き、依頼を受諾する。

そして、酒場の外に出ると視界がダンジョンへと切り替わる。

俺たちはまた…帰ってきたんだ。


「トラップに注意して進もうか」


俺たちは前回の経験から淡々と進み、あの分かれ道にたどり着いた。

メイと王子が揉めた場所である。


「この場所久しぶり〜!今度はどっち行く?」

「前回は右に進んで痛い目見たからまっすぐ行きますか」

「それもそうだな」


今度はすんなり次の行き先が決まった。

うん。これが1番最適な選択だ。

なんで1回目はあんな揉めたんだろ。

……あ、あの時は最初にスライムに襲われて興奮してたからか。

そうに違いない。

で、今回は……

ん?なんで今回はスライムと出会ってない?

もしかしてこれは……


「毎回違うルートになってるんじゃないか?」


俺は切り出した。


「どういうこと?」

「いやだって…今回スライム会ってないし……」

「たしかにそうだね……。てことは前回の知識は関係ない…?」

「多分……」

「それに気づけたってお手柄じゃん!」


王子は俺の背中をバンッと叩いた。

特殊装備を着ている分明らかに威力が上がっている。

普通に危険だぞこれ。


「……ッ」


ちらっとメイの方を見ると、目が合った。

メイはニコッと笑い、前に歩き出した。


そこから数分…くらい歩いただろうか。

それは突然訪れた。


「なんもなくて暇だし俺後ろを注意しながら進むよ」

「了解…!……キャッ…!!」


王子の悲鳴で思わず振り返る。

そこには、先程あったはずの地面がなかった。

下が全く見えない暗闇の大きな穴が1つ。先頭を歩いていた王子の前に出現していた。


「トラップだ……床が抜けたみたい。危なー」


間一髪王子は免れたようだ。

メイも俺と王子の間にいたので無事だ。


「とにかく…無事でよかった」

「ほんとにびっくりしましたよ。ここからも注意して進みましょ」


メイの言葉でまた足を進めた。

もう仲間の死は見たくない、そんな思いから今度は俺が先頭で周りを探索しよう。

そう思ってトラップの穴を横の小さなスペースを使って渡りきった時だった。


「…………だよね?あ、私が1番後ろ行くよ。先、行……」

「キャァァァ!!」


背後からメイの悲鳴が轟いた。

思わず振り返ると、先程あったはずの王子の姿がなかった。

穴の縁でメイが咽び泣く。


「王子さんが……足滑らして……落ちた……」


すかさず穴を覗くが暗闇で何も見えない。


ただメイの泣き声だけがダンジョン中をこだましていた。


--続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る