第30話 微かな記憶、約束

「ペアルックどんなのにします?」

「やっぱ統一感ある全身特殊装備が良いよね」

「ミワコさん!カタログ見せて下さい!」


ペアルック…ペアルックか〜……

んふ〜ふふ〜


さっきから顔のニヤけが止まらない。


これが人生の勝者の気分か〜

ふふふ〜


「…………でいいですか?わんさん?」

「ふふ〜良いよ〜」

「じゃあ決まりだね。早速素材探しに行こうか」


ペアルック〜ペアルック〜

俺の心の中は多幸感でいっぱいだった。


~~~


俺たちは森へやって来た。

目的は、装備のための素材である"れっどふらわぁ"を採集するためである。

れっどふらわぁとは名前の通り赤い花らしい。


「んふ〜ふ〜」


俺は口笛混じりにいつもの変わらぬ速度で採集していく。


「なんかわんリスポーンした時とは別人みたいだね」

「そうですね。めっちゃ楽しそう!……ッッ…!!」

「メイちゃん?」


メイは王子の言葉には答えず顔を背け、黙々と採集を始めた。


「……」


王子も続いて採集を始めた。

その様子はどこかもの寂しそうに見えた。


そういえばこれってどのくらい集めるんだ?

上の空になっていてあまり聞いていなくて分からない。

まぁでも俺はどうせカンストまで集める。

だから関係ないか。


ん?


俺はメイの前と違った雰囲気を感じとった。

王子は特に気にしていないようだが……


アイロニーにて俺はメイと1度採集クエストを共にした。

その時は本当に始めたてでメイのことはチラ見程度しか見れなかったが今はっきりと見て分かる。


明らかに動きが初心者ではなかった。


顔つきもそうだが手際が見違えているほど良くなっている。

それに王子との対立や和解…少し気になる事がある。


メイの中でなにか心境の変化があったのかそれか……


-1時間後


「これで終わりと!」


俺はカンストに到達する最後の1つを手に入れた。

王子は飽きて地面の小さなグラフィックをぼーっと眺めている。

一方のメイは俺の事をずっと見つめていた。

そのせいで少し集中が途切れかけたのだがそれはまた別の話。


「あ、終わった?これで私達ももっと強くなるね!!じゃ帰ろ〜」


王子が立ち上がりイクシードの街へ戻って行ったので俺も続こうとした時、服に違和感を感じた。


「あの〜わんさん1つ良いですか?」


振り返ると、メイが俺の服の裾を少し引っ張っていた。

あれ、こんな事少し前にもあった気が……


「私との約束覚えてますか?」


約束?そんなのあったっけ…?


「約束の件…ダンジョンのクエストクリアしたらよろしくお願いしますね!」


メイはそんなセリフを残し、王子の方へ走っていった。


約束約束……


………なんだっけ?


メイと別れた後の記憶が濃すぎてさっぱり忘れていたわんであった。


--続く

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