第29話 リスポーン、卒業

「わん!起きて!!」


俺は目を覚ました。

目の前には王子とメイの姿。

俺はどうやらイクシードのリスポーン地点…入り口でリスポーンしたようだ。

そうか…2人もリスポーンして……


「ごめん!俺も死んじゃった」


2人とも俺を責めるだろうな…

魔法陣のこととか王子の手とか俺が見捨てたようなもんだし……

全部……俺が…悪い……


「全然良いよ!私こそ先死んじゃってごめん」

「私なんて1番に死んじゃいました!」


2人は俺の思ったより明るくて、もう既に前を見ていた。


「ん?どうしたのわん。そんな死人みたいな顔して」

「ううん。何でもない!」


その明るさに俺も気持ちが少し晴れた。

彼女らの優しさを心に痛感した。


「どうする?これから。また挑む?」


正直乗り気はしない。

これは俺の心の問題では無い。

また挑んでも絶対に同じ結果になるだろうと思うからだ。

"絶対に"。


「2人とも聞いて欲しいんだけど」

「うん」「何ですか?」


無垢な目で俺を見つめる2人。


「多分このまままた挑んでも同じ結果になると思う。だからさ…装備整えない?」


この提案は2人のやる気を削いでしまわないだろうか。

俺はもう…仲間を……失いたくない……


「そうだね。私皮の装備だしメイちゃんなんて初期装備だしありだね」

「私も防具着てみたいです!」

「じゃあお金もあるし装備強化しよっか!」


俺も用事あるし一石二鳥でちょうどいいか…

3人はリスポーンしたその足で武器屋へ向かった。


~~~


「いらっしゃいませ〜」


酒場同様やはりアイロニーとは別人が店員として立っていた。

細長の目の平安美人風の女性、左胸には『ミワコ』と茶色の名札がある。


「あの〜装備買いたいんですけど」

「はい〜予算はどのくらいでしょうか〜」


王子、メイ、ミワコの3人が交渉をしている最中、俺はとある決意を固めていた。

アイロニーの頃からずっと思っていたこと。

ずっと夢だったこと。


俺は今…スライムヘッドを卒業する…!


酒場に行く時や森へクエストに向かう時、普通に街を歩いてる時だってずっと視線が痛かった。

俺を蔑むような目。トラウマものだ。

そもそもあの時あったカスみたいな素材で作ったゴミ装備だ。

なんの愛着もない。

やっと卒業だ。


「ねぇわん!ちょっと相談なんだけど」

「ん?どうした?」

「私たちってもう仲間じゃん?だからさ…ペアルックしない?」

「ペアルック…?」

「はい!最近無限で流行ってるんですよ。仲間たちで同じ特殊装備着るの。だから私達もやりません?」


なんだそのThe青春みたいなしきたり。

今までの人生で全くと言っていいほどなかった青春。

もしかして俺…陽キャの仲間入りした!?


一緒にクエストに挑む仲間も沢山(2人)いるし友達(1人)もいるし女の子もいるし絶対そうだ!!


今までの俺には沢山コンプレックスがあった。


人も怖かった。


でも…今はもう違う。


俺の青春はこれからだ!!





☆今までご愛読ありがとうございました!

先生の次回作にご期待ください!!
















--続く

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