第28話 仲間のため、大岩

「マジか…こんな簡単に死ぬのかダンジョンは……ってか今のは何なんだ?」

「あれはトラップだよ。ダンジョンには他にも色んなトラップがあるっぽい」

「そうなのか…油断出来ないな」


くそ…最悪だ。メイが死んだのは俺の責任だ。

俺が仲間に入れてしまったせいでメイに迷惑をかけてしまった……


グッ……


「そんな暗い顔しないでよ!どうせもうリスポーンしてわんのこと待ってるよ」

「王子……」

「メイちゃんのためにもこのクエスト…クリアしよ!」

「あぁそうだな。ありがとう」


王子はニッと笑った。

よし!切り替えて行こう。

クリアしないとメイに顔が立たない。

次からはトラップに注意して進もう。


ガキッ


ん?何だ?また変な音がした気が……


「わん〜!後ろだ〜!!」


振り返ると、背後から丸い大岩がものすごいスピードでこちらに転がってきていた。


「ヤバいって」


2人は前へ全力で走った。

道幅の狭い一本道、前に走るしか逃げ場はなかった。

後ろを振り返らずとにかく進む。

だが、一向に岩の音は止まなかった。


「あ…あれは……!」


前方数十分メートル先に左への分岐が見えた。


「あそこに入れば岩をまける!」

「本当だ!行こう!……あっ!」


王子は、綺麗とは言えない石畳の地面に足を詰まらせ転んでしまった。


「…ッてて……」

「王子!早く!!」


分岐まであともう少し、俺は王子に手を差し出した。

岩もずんずんと距離を縮めてきている。


「わん…ありが……ッた…」


王子は俺の手に腕を伸ばそうとしたが、すぐにその手を引っ込めた。


「ごめん。私足捻ったっぽい。もう無理だ…」

「何言ってんだ!早く!!」

「私のためにもクリアしてね」


その様子からもう王子は間に合わないように見えた。

すぐそこまで岩も迫ってきている。


「クソッッ……」


俺は手を引き、また分岐を目指して走り出した。


「あが……」


もう後ろは振り返らない。

ただあの二人の死を無駄にはしないという思いだけが俺を先へ進めた。

分岐まであと数メートル。

岩もスピードを増して襲いかかってくる。


「はぁはぁ…あと…少し……」


岩が俺の背中を削りと…ったところで分岐に入ることに成功した。

岩はそのまま俺の目の前を通過していく。

俺は、すんでのところで助かった。


背中が少し痛むがゲームオーバーに比べたら安いもんだ。

その痛みに耐えつつ、またゆっくりと前に進み始めた。


「絶対…クリアしてみせるからな。仲間の……ためにも」


どんだけ進んだんだろう。

痛みからか次第に視界も暗くなっている気がする。

あそこで左に曲がってからずっと一本道。

これ…どこまで続くんだ。


ん……なんだあれ…


視界の遠くに少しの光が見えた。

松明とは違う眩い光だ。


俺はその光に向かって少し早く歩いた。


「扉か…」


それは扉だった。

ダンジョンにあっても全く違和感のない黒い扉。

その隙間から光が漏れていた。


!?!?


俺は思い出した。

最初に聞いた王子の説明。


「ダンジョンって書いてるクエストは何種類もモンスターが出てきてかつそこのボスを倒したらクリア…みたいな感じだった気がする」


ゴブリンの時は助かったが今回、それを思い出した頃にはもう遅かった。


俺は背後に立っている何者かに対して、ゆっくりと振り返った。

そいつの顔が扉からの光で少し照らされる。


あぁこいつがボスか……


ボスの右腕が俺に振り下ろされた。



-GAME OVER-



--続く

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