第16話 いざ、次の街へ

目が覚めると、そこは森の中だった。

まだ視界がボヤけている。

何だ?今…何が起きた?

頭痛の治まらぬ中、必死に記憶を遡る。


……そうだ…俺はショウに言われて木の下を……


後ろを振り返るとあの大きな木があった。

が、俺が掘ったはずの大きな穴はどこにも見当たらなかった。

状況があまり理解出来ないがこれだけは言える。

俺はショウに騙されたんだ。


「おっと…!」


視界の右上に電話マークが表示された。

カタナからの着信のようだ。


「あ〜もしもし?カタナです」

「…もしもし……どうした?」

「…いやお前がどうした?俺はもうイクシードに着いてるかな?って思ってフレンド同士になると通話できるから電話したんだけど」


「ショウに騙された。リスポーン地点にある木の下だって言われたのに全然行けなかった」

「そうか…お前は嫌かもしれないけどそんなに落ち込んでるならイクシードの行き方教えてやろうか?」


俺は迷った。

正直まだ放心状態だ。

今の状態で行き方を探す気力は無いように見える。

だが、俺の信条に反する……


「……いや…」


そこまで言葉が出たところで頭にあの血涙を流した少女を思い出した。


「……お願いしたい」


早くこんな所離れたくて咄嗟に出た言葉だった。


「分かった。イクシードへはその木の上を探したら行けるよ。だからそのショウって奴あながち悪い奴でもなさそうだぞ?単純に了が聞き間違えたとか」


言われてみたらそんな気もする。

ショウは俺を騙した訳では無い…のか?


「…分かった。ありがとう奏多」

「全然全然!ていうかその木の下とか掘ってもなんも無いだろw何時間くらい掘ってたんだ?」


ん?奏多はあの少女を知らない…のか?

プレイ時間1000時間をゆうに超えるガチのプレイヤーだぞ?

俺をおちょくってんのか?

それともホントに知らないのか?


だったらあの子は……





"何"だ?


「…全然ちょっとだよ…あの…奏多さ…ちなみに無限で血涙を流した少女って知ってるか?」

「んにゃ?全然聞いたことないけどそれがなんかあるのか?」


声色から嘘は感じられない。

だったらいよいよあれは……


「冗談だよ!ありがとう奏多!また一緒に遊ぼ!」

「おう!いつでも頼ってくれ!」


通話が終わり、俺は木の上を眺めた。

あの少女についてはこれからクリアしていくに連れていずれ分かるだろう。

今は次の街に行く事が先だ。

俺は木に手を掛けた。


歴戦の傷なのか、少し凹みがあるのでそこまで苦労せずに登っていける。

葉っぱや木の枝をかき分けどんどん登っていく。

道中木の幹にとある文字が刻まれていた。


【頂上から飛び降りろ

さすれば次の街に辿り着かん】


なるほどね。つまり頂上に登れと言う訳か。

どんどん俺は登っていく。

そして遂に頂上へ辿り着いた。


そこからはアイロニーが一望出来る。

いわゆる絶景だった。



無限を初めて改めて神ゲーだと思える要素が沢山あった。

グラフィックやプレイヤー同士の交流、上げだしたらキリがない。

そして謎も沢山残っている。

ショウは一体何だったのか、終わらない神ゲーとは何なのか、あの少女は……

この先続けていけばいずれ分かるだろう。

俺は期待に胸を膨らませた。


さ!行きますか!


俺は地面に向かって大の字になり飛び降りた。


--続く

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