第15話 相対する、絶望

「いいよ。教えてあげる。ただし…」

「ただし…?」

「ただし個人チャットで教えるよ。誰かに聞かれてるかもしれないからね」


あ、ホントに教えてくれるんだ。

一安心したがまだ少し勘ぐってしまう。


「個人チャットはフレンド同士じゃないと出来ないから登録しよ!俺のID教えるね」


こうして口頭でショウのゲームIDを言われた。

俺は言われた通りフレンド登録画面にたどり着きIDを打ち込んだ。

そういえば奏多もフレンド登録しろって言ってたっけ?

ショウに続いてメッセージで聞いた奏多のIDも打ち込み、相手の認証を待った。


ショウはすぐ隣にいてずっと待っているのだが、早いのは奏多の方だった。

奏多のゲーム内での名前である"カタナ"とフレンドが成立した。

奏多も毎日数時間ゲームをする廃人なだけあってやはり今も無限に張り付いているのだろう。

隣にいるやつより早いって正直異常だ。

いい意味でね!


すると、少し遅れてショウも認証が来た。


「わんは今日始めたばっかなんだよね?フレンドは俺が1人目?」

「いや違うよ。さっきも出てきたトレーニングについて教えてくれたカタナっていう友達が1人目だね」

「……そうなんだ…カタナね…」


その言葉は華麗にスルーされた。

俺にも友達はいるんだぞ!と暗にアピールしたつもりだったのだが。


「ねぇ僕たちとはフレンドにはならないの〜?」


クラウン達3人が俺とショウの間に割り込んで入ってきた。


正直あまり乗り気はしない。

俺にはとある信条がある。


それは、俺が仲良い人or仲良くなりたい人としかフレンドにならない。というものだ。


フレンドという信頼の証を安売りしたくはないのだ。

正直ショウとのフレンド登録も嫌々だ。

俺はクラウンの言葉を軽くあしらった。


「もう少し仲良くなったらね」

「ちぇっ」

「じゃあ教えようか。イクシードへの行き方を」


遂に来た。もうこれでこんなクソな奴らとはおさらばだ。


「個人チャットに送ったよ。確認してね」


俺はショウ一行への怒りを指先に込めて、ショウとの個人チャットを開いた。



【イクシードへの行き方→→→リスポーン地点のすぐそばにある木の"上"を探すと行けるよ】



その時俺には、「あ、本当に教えてくれるんだ」という驚きの気持ちと「嘘じゃないよな?」という疑がいの念がよぎっていた。


しかしそれは行ってみたらすぐ分かる話だ。


「俺たちは少し用事があるから先行っててよ。イクシードでまた会おう!案内とかしてあげるからさ」


これは好都合だ。もうこんなヤツらと会いたくない。

俺はショウ一行が遠くに行って見えなくなったのを確認し、ショウのフレンドを削除した。

もちろんメッセージも消えてしまうのだが、もう既に1度見たのでわざわざ残しておく必要もないだろう。


「さ!行きますか!」


俺はゲームをスタートした時の記憶を頼りにリスポーン地点である森の中へと向かった。


~~~


数十分の時間を有し、俺はリスポーン地点に辿り着いた。

1面の森の中に一際目立つ大きな木…これだショウが言ってたのは。


「確かこの木の"下"だったよな」


下って…掘るのかよ。

まだショウへの疑念が取れない中、木の下の地面を掘り進める。


だが、少し気になる事がある。

地面が全くと言っていいほど掘られた形跡がないのだ。

対してこの木の表面にはいくつか傷が目立つ。

その事象がショウへの疑念を加速させる。


しかし疑っても次の街へは行けない。

とにかく俺は掘り続けた。


「ん?なんだ?」


微かに地面から風を感じた。

ここには…この下には…"なにかがある"!!

そう思ってからはすぐだった。

下に掘れば掘るほど風を強く感じようになっていった。

あと少し…あと少しだ!


「ん?」


途端俺は理解した。

なぜ地面から風が吹くのか。

なぜ段々と強く感じるのか。


理由は1つだった。

下には"空洞がある"。

俺はそれに気づいたのはその空洞に落ちた後だった。


「ア︎︎゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


落ちる落ちる。

その恐怖と風圧で俺は意識が飛んだ。


次に現実を認識したのは地面に落ちた後だった。

だが痛みは1つもない。


あの高さからあの時間落ちたのだが痛みがないのはなぜなんだ?

そういえばこの地面……

いやこの場所……

辺りは薄暗く、周りに何があるのか分からない。


いや…何もない……のか?


「こっちよ」「こっちよ」


何だ?頭に直接少女の声が響いてくる。


……呼ばれている……行かなくちゃ


俺は立ち上がり歩き出した。

頭の中で少女の言葉がぐるぐると繰り返し鳴り響いている。


自分でもどこに向かっているのか分からない。


でも自分の足に迷いはなかった。


あれ?あれはなんだ?人影か?


暗い世界の中、一際暗い影がある。


分かったぞ…俺は……あれに引き込まれていたんだ。


ゆっくりと歩いて近づくにつれ、それが少女の後ろ姿であることが分かった。


あぁ話しかけたい。


もう……止まらない。


「ねぇ君。こんな所でどうしたの?」


少女は振り返る。



「ッッ……!!」



振り返った少女の目からは血の涙が流れていた。




【遘√r隕九▽縺代※縺上l縺ヲ縺ゅj縺後→縺??ゅ%縺薙°繧峨′逵溘?辟。髯舌↓邯壹¥蝨ー迯?□繧医?】




-GAME OVER-





--続く

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