第5話 三度の飯より、神仏よりも三国志!

『三国志』は戦乱を舞台とした中国の歴史物語だが、私は三国志の英雄達に人間としての温かさと、何よりも

「会うべき人達にやっと再会できた!」

 出会いというよりも、再会を果たせた喜びを強く感じた。


 クラスメートや担任教師からイジメを受けていた私が人間不信に陥ることなく、生き地獄の日々に耐えて生きる道を選び、人生の可能性と人の和を広げられたのはひとえに三国志の英雄達のおかげである。


 その当時、巷では「三度の飯より三国志」ブームが巻き起こっていたが、三度の飯さえ忘れさせる三国志である。

 当然、生きるのに必要のない教室内での記憶は、授業で得た知識とともに水洗トイレの水の如く排出された。


 好きとか興味あるとか意識する暇さえなく、ただただ呼吸をするように、辛い日々から逃れるように、三国志にのめり込んでいった。


 天地人に神仏。全てが敵にしか見えなかった当時。同級生や担任の言動に耐えかねながらも、死ぬに死ねない。

 そんな生死の瀬戸際で自分を騙すように生き、傷付けられたくないと心を閉ざしたことで無感情、無愛想、無反応と言われていた私の中に、感動して流す涙や、溢れ出る感情が人並みに備えられていたのだと、人として生きていけるのだと三国志の英雄達は気付かせてくれた。


 命と希望を捨てずに、どんな状況下であろうとも心を重んじて生き続けることの大切さを教えてくれる英雄達かれらの存在は、私にとって命綱となっており、授業中も休日もオンもオフもなく、三国志の世界に入り浸った。


 生まれた時代も国も違えど、私の心と心臓を動かし続けてくれたのは、三国志の英雄達に他ならない。


 三国志の世界だけが唯一、私の命をかくまってくれる生場所いばしょだった。

 命を運んだところに運命が開ける、と言うが誰ひとりとして助けてくれなかった生き地獄から、私の人生と命を救ってくれたのは神様でも仏様でもなく、三国志の英雄達だった。

 

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