第6話 同じ時代の人より三国志!
今から千八百年前の中国。自分だけ助かれば、おいしい思いが出来れば、他の人はどうなってもいい、と権力争いに明け暮れていた時代。
お金さえ払えば官位を買えた時代。
弱い方が悪い! 弱肉強食な時代。
異を唱えたくても、そんなことしてもどうにもならないから、長いものに巻かれて安全を確保する時代。
それは、イジメを見ても見ぬふり。イジメられる方が悪い。一緒にイジメに加わった方が安全だからと、私をゴミ扱いする教室内の環境にどこか似ていた。
そんな状況下にいたら「これが普通だ」と思い込まされ、抗うことも、生きる勇気も失ってしまう。
だが、三国志の英雄達は、違った。
「そんなのが普通だからと言って、口先だけで綺麗事を並べて何もしないのか。
目の前で苦しんでいる人がいるのに、何で立ち上がらないんだ? 弱い人たちを誰が守るんだ! こうなったら自分たちが天下万民のために立ち上がろう!」
出会ったその日に意気投合し、運命をも共にする桃園結義から始まる三国志の世界。
当初、私は後世の人間として彼らを応援していたが、知らず知らずのうちに、彼らの世界に巻き込まれ、同じ一人の人間として感情を共にするようになっていた。
彼らとは生きている時代も国も違うけど、共感出来ることが沢山あった。
そんな三国志の英雄達の生き方に魅了されればされるほど、言葉も心も通じないクラスメートや担任教師だけが、全ての人間を代表しているわけではない、と思えるようになっていた。
この中から友達を無理に探さなくてもいい! 分かり合えなくてもいい!
本当の友達と呼べる人にはこれから先、きっと出会える! 何よりも今は、クラスメートよりも、三国志の英雄達と絆を深めたい、と思うようになっていた。
こうして、十三歳だった私は、タイムマシンを使わずに三国志の世界に行ったまま、今日まで、還らぬ人となったのだった。
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