第4話 新たな出会い
クラス分けが張り出された。
『一年A組 谷村光輝』
教室に入ると、幼稚園から一緒の原純也も同じクラスだった。
『同じクラスになれて良かったよ』原が声を掛けてきた。
『そうだね。稽古も一緒に行けるし』
最近は合気道だけでなく、弓道の面白さにもハマって二人で通っている。早朝稽古の時は、朝の空気が気持ちよくその静寂さに身が引き締まる。合気道は他人と優劣を競う試合や競技はない。技を磨き他人を傷つける目的ではなく身を守る武術だから、弓道とは相性が良いように思う。弓道も礼儀と作法を重んじて、精神の統一を重視する日本古来の武道だ。
冷静な判断力と強靭な精神は一朝一夕には身につかない。日々の鍛錬で培われるものだ。
初等部ではそんなにハードな授業もないので、一通り終わって帰る時になり
『弓道の大会も近いから、朝練もしようぜ』と原が言ってきたので
『うん、筋トレも増やした方が弓を引く時に楽だと思うんだけどどう思う?』
『光輝、筋トレもやり過ぎると筋肉のしなやかさがなくなるからストレッチも大事だよ』
『あぁそうかもね。気をつけるよ。純也も一緒に帰ろう』とカバンを肩に掛けた。二人共ランドセルではなく、斜め掛けのカバンにしていた。道具を背負う時にランドセルだと邪魔なのでと大義名分を振りかざして学園側に認めさせたのだ。すると
『相変わらず仲が良いね!僕も混ぜてよ』と声を掛けてきたのは、影山秀樹だった。そう言えば彼も同じ幼稚園だったな。確か父親が警察官僚で、何かと僕達の後をついて来た。とにかく明るく元気な人気者で、人を良く観察している。悪い奴ではなさそうだ。
5月に入ると、クラスの中でも自然とグループ分けがされてくる。
女子のグループでは、マウント合戦が繰り広げられて、グループ内での優劣が付けられる。光輝の中の美沙は元女子だったので、今回は外野で良かったとつくづく思っている。
とにかく女と言う生き物は、幾つになっても大して変わらないものだ。実に内面には陰湿な部分を隠し持っている。
冷静な目で見ていると『佐藤あやか』と言う女子が今回のイジメ対象になっているようだ。
顔は可愛い方で、性格が大人しくちょっとおっとりしている所が男子にウケが良いようだ。
これがモテない女子の逆鱗に触れて『男に媚を売るいけ好かない女』とターゲットにされたようだ。
そんなある日、佐藤あやかがスリッパを履いて廊下を歩いていた。
『おい、あやか。スリッパなんか履いて、上履きはどうしたんだ?』影山が声を掛けた。
『うん。今日下駄箱になかったの』
『ふうん、そう』
影山はA組の教室に入ると教壇に立って
『はい、皆さん注目!クラスメイトの佐藤さんの上履きが失踪しました。誰か目撃した人はいませんか?』
教室はザワザワしているが目撃情報はない。
まぁこれって100%女子の仕業だよねぇ。とすれば、ゴミ箱か裏庭の茂み辺りかな。さすがに小学生が焼却炉で燃やすって事まではしないと信じたい。
『秀樹が言うんじゃ、協力しない訳にはいかないね。純也も捜索を手伝ってくれる?僕、心当たりを探すから』
『光輝も人が良いね。了解』
結局、上履きは狙った通り裏庭の草むらの中に放り出されていた。
『光輝、凄いな。良く分かったね』
『いやぁ、大した推理でもないよ。上履きがそんなに遠くに逃げる筈がないと思っただけだよ』
と言う事で、あやかの上履きはちょっと汚れていたけれど無事に持ち主の元に帰った。
(女心が多少理解できた事が幸いした事件だった)
しかしそれ以来、クラスメイトから何かと相談事を持ち込まれるようになった。
純也・秀樹・光輝の3人はいつの間にか『お助け探偵団』と呼ばれるお人好しトリオとして定着してしまった。
『この元凶は影山のせいだよね』と純也がため息をついた。
しかも秀樹は弓道も始めて、一緒に道場通いまでしている。これほど熱烈に迫られれば、もう仲間認定するしかない。本当に良い仲間と巡り会えた。腐れ縁万歳!
美沙の第二の人生は幕を開けたばかり。ちょっとだけ期待している美沙だった。
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