第3話 持つべき者は友
幼稚園に入ってそろそろ身体を鍛える時期が来た!
まず何をするべきかと考えた時(そうだ、合気道が良いと閃いた)合気道は身体を鍛えるのみならず、精神をも鍛える武術で女子の護身術にも良いとされている。女や子供のように身体が小さい者でも大きな敵と闘えるのだ。これは大きい!(もっと早く合気道を習っていたら、簡単に死ななかったかもしれない)と美沙は後悔していた。
さて合気道を習うとしてその前に親の説得がある。どうしたものだろうかと悩んでいたら、光輝が『そんなの簡単だよ。まずはお母さんに甘えれば良いんだから』と言って
『ママ、僕合気道を習いには行きたい』と始まった。(ちょっと、ちょっとこの子なかなかの甘え上手じゃない。やるわね)と舌を巻く美沙。
無事に合気道のキッズクラスに入れた。武道とは礼儀に始まり礼儀に終わるものなり。呼吸法を学び気を感じるという教えは、人生において大切な事である。(男として心技体を身につければ、モテる男間違いなし!)と意気込む美沙に光輝が『ちょっと何言ってるのか全く分からない』と肩をすくめた。
合気道クラスで同じ幼稚園の子供と出会う。
原純也。純也の家は代々続く大きな寺の息子で次男坊として生まれた。本人は次男なので坊さんならなくて済むと喜んでいた。
『家に縛られるなんて嫌だよ〜。兄貴には悪いけど助かった』(子供って意外にシビアよね)
光輝とは最初からウマが合うのか、出会ってすぐに打ち解けていた。(男同士の友情って憧れるわ)と美沙は思う。純也とは合気道でも切磋琢磨して鍛錬に励んでいる。ライバルがいるといないとでは集中力が違う。(小ちゃい子の道着姿って可愛い)と鏡に映る姿にすっかり親バカな母美津子と美沙の意見が一致していた。
幼稚園と道場通いであっという間に時は経ち、いよいよ天下の青蘭学園の初等部への入学試験の日がやってきた。青蘭学園は文武両道を目指す一貫校だ。初等部・中等部・高校・大学と良家の子息・子女が集う学舎ですある。優秀な子供を集めている事で有名な私立学園は、政財界からも子息・子女が集まっている為、小さな社交界とまで言われている程だ。
『いいか光輝、落ち着いて試験に臨めば大丈夫だぞ!』
『パパこそ落ち着いて!光輝は大丈夫だから』
(いやいや二人とも落ち着いてよ!光輝なら大丈夫だから)って本人以外全員場に呑まれ気味である。その本人はいたって平常心で頼もしい。
試験や面接も無事に乗り切って、晴れて青蘭学園の門をくぐる。
今日は記念すべき初等部の入学式である。よく晴れて桜が美しく咲いている。
『さぁ、皆んなで記念写真を撮るぞ』
『ほら光輝、ちゃんとカメラに向かって笑って』
三脚に固定したカメラのタイマーを押して走って来るお父さん。お母さんと僕の肩を抱いてポーズを決めた。カシャっと音がして無事に記念写真が撮れた。
『お兄ちゃん、小学校入学おめでとう。これからも妹の由香里と仲良くしてあげてね』
『大丈夫だよ、ママ。由香里は可愛いもの』
由香里は3つ違いの妹。今日はお母さんの妹夫婦に預けて来ている。小さい子供には面倒過ぎて飽きてしまうだろうと預けて来て正解だった。初等部とは言え名門校だけに、重々しい雰囲気で大人でもちょっと肩が凝るくらいだ。
(さぁいよいよ小学生。毎日がとても新鮮で生きる喜びに満ちている。新しい出会いに胸が弾む。美沙の中の記憶にも小学校入学式の記憶がある。お母さんと二人で?なんだろう。お父さんの記憶がない。顔も分からない。なんでだろう。頭が痛い)
まだ始まったばかり。これからの事はこれから乗り越えて行けば良い!光輝は晴れやかに笑った。
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