その鳥、苦悩。

収録が始まって4時間。

とうとう最後の大物が姿を現す。

「お疲れ様ですー。」

姉御は朗らかに挨拶すると現場に入って来た。

収録が始まるとブッコローは軽くジャブを打つ。

「あれ?大平さん髪切った?」

「切ってないですよー!ブッコローってばタモさんじゃないんだから!」

この何気ない緩いオープニングトークで今日の雅代姉さんのコンディションを見るブッコロー。


会話のやり【取り】だけに【鳥】のみぞ知る。


『…今日の収録押しそうだなー…。』

そのブッコローの予想通り、雅代姉さんのマシンガントークは留まる所を知らずツッコんでもツッコんでもボケ倒す。

もはや迫り来るボケを千切っては投げ千切っては投げ、ブッコローの脳の疲労はピークを越えていた。

しかしそこで休ませてくれないのが有隣堂、いやハヤシP。

撮れ高の為にそのままカメラを回し続け、とうとう終電も近付く時間になって来た頃やっと全ての収録が終わった。


「…お疲れ…様です。」

挨拶をして現場を後にして建物の外に出るとそっと呟く。

「電車で帰ろうかな…。」

急げば終電に間に合いそうだと思ったが思い直して空を見上げた。

「……いい月だし…飛んで帰るか…。」

美しい満月はブッコローの家の方向をそっと優しく照らしていた。

「あー…マジで疲れた…明日のレースは午後から賭けよ。」

大きな翼を広げて空に羽ばたくと茶色い羽が一枚空に舞う。

「ミミズクも楽じゃないなぁ…ま、人間よりはいいけど。」


今日も明日も明後日も土日以外は祝日ですらも仕事。

人間もミミズクもここまでデキる鳥だと変わりなく思えてきますね。


横浜在住の皆様。

今日もふと空を見上げると少しばかり恰幅のいい鮮やかなオレンジ色のミミズクが貴方の頭上をブツブツ喋りながら飛んでいるかもしれません…。

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平凡そうで平凡でない鳥の一日 奏詩~kanata~ @kanata_2426

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