その鳥、雄弁。

収録が始まった。

いつものようにタイトルコールをして文房具王になり損ねた女を紹介する。

しかし今日はいつもと様子が違う…珍しく岡崎さんがやる気だ。

ブッコローの軽快なトークと上手く噛み合い、少々気持ち悪いくらいだった。

恐らく今までの歴代の収録の中でこんなに噛み合った事は一度もないであろう。

流れるように1時間足らずで収録終了、この事はブッコローよりもPを喜ばせた。

「岡崎さん今日なんかいい事あったんすか?」

収録が終わってすぐにそう声を掛けると嬉しそうに満々の笑みで彼女は答えた。

「今日はキキちゃんのお誕生日なんです!」

「…あーー…おめでとうございます。」

「ありがとうございます~!」

己の事のように嬉しそうな岡崎さんに水を差すわけにもいかず社交辞令で言ったお祝いの言葉すら全力で受け取られる。

よし、岡崎さんは今日も通常運転のようだ。とブッコローはそっと思ったがそれは口に出さなかった。

なにしろデキる鳥だから、余計な事は収録以外では言わない主義なのだ。


「間仁田さんまだ来ないんですけど…。」

次の収録に移ろうとしている最中、郁さんが困ったように入口をチラチラを気にしている。

「電話した?」

「はい、でも出ないんです…。」

Pの問いに郁さんはもう一度電話を鳴らすがやはり出ない。

「あれじゃないですか?皿でも洗いに行ってんじゃないですか?」

ブッコローがふざけて言うと、郁さんは「あっ!」と言って一度電話を切りまた別の場所に電話を掛ける。

「…間仁田さんお皿洗ってたみたいです。」

「はぁ!?いや、冗談で言ったのにマジで!?」

「今こっちに向かってるみたいなんで…。」

「まぁ間仁田さんだしそのくらいの事しますよね。」

ブッコロー的には一応フォローのつもりで言ったが完全に【間仁田ディスり】になってしまったと気付いた時には他の人達も『そうだよねー、間仁田さんうっかりだもんねー』と同意を得てしまい撤回できなくなりそのまま投げっぱなしとなった。


遅れて来た間仁田さんが平謝りしながら入って来て、収録が始まると紹介する商品の値段を間違えたのはもちろん言うまでもない。

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