第14話/最終話「2024/2/15[二人だけの教室]」


――我、獅子王にもままならぬ事が、あったか不覚実に不覚……!!――


「うわっ!?」


 その、誤ってゲーム画面の「獅子王」のアイコンにタッチした時の、覇王のキャラボイスがうるさい。


「……えーと、どこまで話したっけ?」

「……さあ?」


 まあ、その僕の「自慢話」は別に、彼女にとってはあまり面白くはないだろう。


「歴史上にいた、昔の英雄がモチーフでさ……」


 でも、彼女は内心で、どう思っているかは、知らないが。


「暴君とも言えるけど、それは自分の国の民、全てはそれの為に、あえて悪行を行ったんだ!!」

「……へえ?」


 一応、頬杖を付きながらも、新宮さんは僕の「高説」に付き合ってくれる。


「……私の叔父さん、みたい」

「……ん?」

「あっ、何でもないわ、小田切君」


 シャ……


「うぉ!?」

「きゃ!?」


 あれ、何だかいきなり。


「……まぶし!!」

「……わね、小田切君」

「あ、ああ……」


 窓からの夕陽が、やけに強くなったな、なんだろ?


「……でも、僕も」


 その強い、割れた窓ガラスを突き破りそうな、橙色の光に目を細めつつ、僕は。


「世の為、人の為なら、そういう道を」


 それは、その考えは会社の「内部監査役」を努め、身内からも。


――まるで、あのひとはゲシュタボだよ――


 と、陰口を叩かれながらも、仕事をしてきた、父親。


「たとえ苦しくても、進んでも……」


 そして。


――いかなる善行を行っても、それが報われるとは――

――なんだよ、母さん?――


 キリスト教の信者であり、婦人警察官を勤めていた、母親。


――決して思うなとの、イエスの言葉よ――

――何、それ?――


 の、母さんの言葉の影響かもしれない。


「……それでも、苦難の道でも良いかも」


 まあ、二人とも、あの日に死んだけど。


「知れないな、僕の人生は……」

「……ええ」


 ん、あれ?


「……そうね」


 ス、ウゥ……


「……!!」


 な、何か今、新宮さんが、凄く、ミリ単位でしか解らない良い笑顔を、見せてくれた気が、気が!?


――これがギャルゲーなら、好感度は目に見えてアップしてたかも!?――


「夢は、きっと叶うから」


 ニ、コォ……


 ああ、やはり、凄く「好感度」がアップしている!!


――ならば!!――


 ここまで来たら、この言葉でも言っちゃえ!!


「……僕の!!」

「?」


 スタァン!!


「僕の、戦いは!!」

「……!?」


 突然、椅子からスタンダップした僕に、新宮さんは驚きとまどっている、そりゃそうだ!!


「……これからだ!!」


 グォン!!


 その、僕の握り拳と共に放った、謎パワーに満ちた言葉。


「……小田切、君」


 に、対して。


 クゥ……


「あっ、ゴメンナサイ、新宮さん……」


 クゥクウ、クゥ……


「……引いた、新宮さん?」


 新宮さんは、忍び笑いを堪えつつも。


「……ごめん、新宮さん」

「……小田切君てさ、本当に」

「う、うん……」


 彼女は、軽く笑みを浮かべつつ。


 シャ、ア……


 強く輝く、教室中を染めてきた、拡がる夕陽の光に包まれながら。


「……凄く」


 軽く。


「凄く、良いね」


 しとやかに。


「そ、そう……?」


 そして、強く。


「うん、とても」


 この、茜色と橙色が混ざった、光に満ちた「楽園」で。


「……好きになって、よかった」

「……えっ?」


 シャ、アァ……!!


 優しく、微笑んでいる。


「……い、今なんて!?」


 その、僕達を、太陽は。


「……です、小田切君」

「……!!」

「どうか、私と……」

「あっ、あっ……!!」


 何も言わず、ただ。


「……って、下さい」


 慈愛の光でもって。


「……ダメ、かしら?」

「……よ、よよよ!!」


 スァ……


「喜んで、新宮さん!!」


 若き恋人達を、太陽は。


 サァ……


「……これからも、よろしくね、小田切クン?」

「……やっぱり、本当に」


 大きな夕陽は、紅く、茜色に。


「僕達の戦いは、これからだぁ!!」

「……フフ」


 美しく、覆った……




~了~




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ホムラの日とホムラの未来とホムラを振り返る過去 早起き三文 @hayaoki_sanmon

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