第12話「20xx/xx/xx[研究所]」

「ふざけないで!!」


 その言葉、を受けた私は。


「産むわ!!」


 脳に、頭に怒りが沸騰した。


――お前は人間ではない――


 上官、私達のまとめ役の、その冷たい、低い声。


――その子の、経過を見なくてはならん――

――P02-Fに、まともな妊娠能力が、あったとはな――


 うるさい、デリカシーがない、上官の腰巾着研究員!!


――よく考えろ、神楽――

――何をですか!?――


 私が、ここまで怒声を上げるのは、本当に久しぶりだ。


――今、君は子供を育てる環境、それがどこにあると思う?――

――……それは――


 その上官の言葉、それを受けて、私の煮え立った頭は、少し。


――……考えろ、神楽――


 沸騰したそれが、冷えてきた。


「……」


 この、今の情勢では、まともな子育てなどは、出来やしない。


――それに――


 私は人間とは言えない、産まれてくる子に、何があるか、起こるかなど、全く予想がつかない。


――……そうか――


 ああ、だから、この上官は。


――叔父さんは――


 こんな、提案をしてくれたのだ。


――だいたい――


 おろせ、その提案をしないだけで彼の、上官の思いやりが。


――そう、あるんだな――


 しかし、全く、それにしても。


――この上官、叔父さんは――


 不器用かつ、そして。


――優しい、いや――


 甘すぎる、こんな仕事をしながら。


「……ところで、神楽」

「何、でしょうか?」

「小田切との、子か?」

「……」


 はい、そうですよ、すみませんね。


「……だったら、何です?」

「……いや、別に」


 なら聴くな、馬鹿叔父さん。




////////////////




 彼らが立ち去り、一人で部屋にいる私は。


「……」


 軽く、自分のお腹を手のひらで、優しく、さすりつつ。


「……あの、馬鹿」


 ここにいない、別の場所で任務についている、彼の顔を思い浮かべる。


「馬鹿、馬鹿、馬鹿男!!」


 ああ、何か、最近私は。


「……もう!!」


 私は、とても怒りっぽい気がする。


――あの彼、馬鹿には、もう何ヵ月も会ってない――


 のも、あるが。


――……そもそも!!――


 だいたい、彼が。


――……な!?――

――ご、ごめん……――

――何、出してるのよ!!――


 一番、悪くて。


――この、無責任!!――

――ご、ゴメンナサイ!!――


 そして、責任がある気がする。


「……全く、本当に私は!!」


 あんな無責任で、かつ。


「……頼りない!!」


 そう、死んだ弟に似て、女々しい彼の、どこを好きになったのだろう。



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