第9話「2062/1/14[統治地区TOY-総司令部]」

 代替わりしたらしい、その隠れ家に潜む「救世主」を率いる新しいリーダー、彼の写真を見たとき、さすがに。


「あの、隠れ家のリーダーは」


 この、獅子王と言えども、その表情に変化が現れた。


「擬態、あるいは姿のコピーをする、能力者なのかもしれませんね?」

「……ああ」

「王、の御姿を」

「……かもな」


 確かに、よく似ている。


――全く、本当に――


 獅子王に、そして。


――俺と、そして――


 彼が、昔愛した、女性に。


「……」


 彼女は、あのとき。


――出来ちゃった婚、だけどね?――

――ええっ!?――


 と言う言葉、それは正確ではなかったのかもしれない。


――……確か、俺が彼女を殺す、数ヵ月前あたり――


 確かに、任務の為に一年近く、彼女とは「遠距離恋愛」だった事があった。


「……」


 もしも、彼女の言葉に、偽りが含まれていたら。


――この、三、四十歳がらみとらしき、このリーダーの男は――


 獅子王の子、その可能性は充分にある。


――……まてよ?――


 いや、経過した月日から、すでに。


――これも、この可能性も――


 孫、それが産まれていても。


――全くありえない想像、ではないな?――


 そう、不思議ではない。


――……彼女の、俺の子孫――


 そして、その能力者、救世主達の隠れ家を「浄化」する戦い。


――それは、俺の――


 支持率集めの為、それだけの戦い。


「……しかし」


 冷酷無比、その心を持つ事には慣れきった、獅子王であるが。


――俺に、自分の子を殺す事が、出来るのか?――


 と、彼が内心で葛藤を拡げている、その時。


「この隠れ家、本当に」

「……ん?」

「討伐する、必要があるのです、ん」


 彼の、獅子王の第一の腹心、その男の、その細い目が微かに。


「スか?」


 光る。


「……フン!!」


 この腹心、昔からの。


――そう、本当に――


 大昔、怪異との聖戦の時からの付き合いである彼が、こういう物言いをするときは。


「……お前は、反対か?」

「……いえ」

「はっきり言わんか」

「……ただ、わたくしは」


 明確な意思を、この彼が常日頃の「イエスマン」の仮面を捨てて、自分の意見を。


「王、貴方に覚悟がおありかと……」


 昔の戦友の時、その「対等」の関係だった時に。


「……私はな、君?」

「ハッ……」

「支配者なのだよ」

「……はい」


 戻る、覚悟を決めた時と、相場は決まっている。


「……命令する」


 だが、獅子王は、今までで、片手で数えるほどしか無かったその彼の、思い切った「諫言」を。


「ガス抜きを、始める」

「……」


 退けた。


「……まあ、君の意見も解るのだが」


 だが今の、最後に獅子王の口から出た「蛇足」の言葉が。


「な?」

「……了解致しました、王」

「……」


 迷い、を表している事など。


――コヤツには、お見通しだろう、な――


 その事は、少し苛立たしい。

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