第8話「2023/1/13[転校初日]」

 少し、似ていた。


「……よろしくね?」


 死んだ、弟と。


「……小田切君、だっけ?」

「う、うん……」

「新宮神楽です、よろしく」

「こ、こちらこそ……」


 その、席が隣になった、彼は。


……キィーン、コォーン


 少し、頼りない気がする人、男子だけど。


「……あの、新、宮さん?」

「……えっ!?」

「消しゴム、落としたよ?」

「あっ……」


 その彼の声、それを聴いて、慌てて私はシャープペンから手を離し。


 スゥ……


 椅子をずらし、床に落ちた、消しゴムを拾い上げる。


「ありがとう、小田切君」


 その時の、私がお礼を言った時の。


「あっ、いや……」


 彼の、はにかんだ、笑みは。


――……ちょっと――


 私の、荒んだ心にも。


――彼、良いかも……――


 潤いを、与えてくれた気がする。


「……」


 ワタシは、本当の意味で。


――プロトタイプ-02-FEMALE型――


 もはや。


――怪異の大門、出現まで、計算上ではあと、一月あたりだ――

――はい――

――バトルフィールドとなる、このエリアの地理を、身に付けよ――

――了解――


 生きている、人間ではない。


――P02-Fの動力は不安定です――


 私の家、研究所での。


――死んだ人間素体に、その彼女の弟の心臓を無理矢理入れたからな、仕方が無い――

――所詮は、試作品ですよ――


 そう言った「デリケート」話は。


――……――


 本人の前で、するべき物ではないと思ったが。


――だが、この素体は、元々は私の姪であるからな――

――……私の記憶は、残っているのですが、上官?――

――だから言うのだよ、プロトタイプ――


 叔父さん、そして私の上官でもある、この人は。


「……昔から、バカ誠実というか」


 私を作り上げる為に犠牲とした、モルモットにも。


――なあ、神楽ちゃん――

――何、叔父さん?――

――このモルモット達の、お墓の塔婆が、アイスの棒じゃあ――

――でも、仕方がないんじゃない、モルモットだもん、無縁仏にしなくちゃいけない……――

――浮かばれ、ねぇよなあ……――


 情を、棄てきれない人。


「……だったら、何でこんな」


 その私の、人間であった時の疑問、それは。


「因業な、仕事をしているんだろ……?」


 彼に尋ねようと、思っては、いたのだが。


――まあ、いいや――


 キィン、コォーン……


「……はい、今日の授業は、ここまで!!」


 少なくとも、今は。


「……さっきは、ありがとう、小田切君」

「あっ、いや……」


 私は、今を「生きている」事、それを満喫しよう。


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