第7話「2026/12/24[抵抗組織・第三支部付近]」

 懐かしき学生生活。


――あーあ、退屈だなあ――


 と、ぼやいていた、あの日々が続いていたら、こうも。


「……めずらしいな、新宮さんが、ここまで負傷するなんて」


 殺伐とした、今の生き方はしていないだろう。


「……ごめん、少し油断した」


 今の彼女は、当然昔の女子高校生の制服などは、着ていない。


「すぐに医療班が来る、それまで耐えるんだ、新宮さん」

「ごめん、小田切君……」


 彼女の纏う、傷だらけの霊動戦闘服、身体のラインが浮き出る程の、薄い素材で作られた「衣服」ではあるが。


――そう、確か――


 彼女がその「能力」を最大限に発揮出来る特殊な素材、それで作られた戦闘服であると、聴いた事がある。


「……身体を大切にね、新宮さん」

「……うん」


 まあ、僕もそれと同じ、男性用の戦闘服を装備しているが。




////////////////




 強く。


 シィン……


 静かに、重く。


 シャ、ン……


 雪が降り、積もる、凍えた廃墟。


「……ターゲット、その下位三匹!!」


 そこに、血と、汚泥と。


 コゥ、ア……!!


 僕の指先から伸びる、万色の「イルミネーション」の光に覆われた、クリスマス・イヴ。


「……効いたか!?」


 僕の顕現した、された能力、それは。


――ギィイ!?――


 怪異達の、能力の無効化。


「……よし!!」


 もちろんそれは、全ての相手に通用する訳では、ない。


「照準合わせ、完了、ファイア!!」


 上級怪異には通用しににく、さらにその上の怪異。


 ガァ、ウゥ!!


 その相手には、今連射している、この僕の愛銃と同じく、効果は無いだろう。


「……ただいま、小田切は怪異、餓鬼タイプを牽制中!!」

「リョウ、カーイ!!」


 ただ、この僕の能力については、その有効性うんぬんよりも。


――もしや、救世主達は――


 かねてからの、聖戦に参加している、人々の疑惑。


――怪異と、同質の存在なのでは?――


 と、いう考え。


「……そう、この僕の力は」


 怪異だけではなく、異能者。


――全く、小田切クン、ヨォ!?――

――な、何だよ!?――

――君は、怖ェッス!!――


 それら「救世主ランク」の者達、味方にも効果が発揮されるのだ。


「……」


 それが、僕の能力が対怪異レジスタンス、それの上層部に、さらなる疑惑を与え、強めてしまったらしい。


――どうも、小田切君の近くだと――

――……ああ――

――カグツチ・コピーの焔が、発揮出来ないのよね――

――うっ、ごめん、新宮さん――

――あっいや、悪口じゃなくて!!――


 まあ、その推測自体は、かなり前から、新宮さんが所属していた、レジスタンスの前身である、旧組織からあったらしい。


「……ヨーシ!!」


 だが、しかし、結局の所、僕が、対怪異の戦力となれた、その理由は。


「小田切クンに、続くんだ、ヨ!!」


 僕が、強いからではない。


「……あっ、先にあっちから来るヨン、小田切クーン!!」

「了解!!」


 相手が、弱くなるからだ。


……キィン!!


「その程度の溶解液など!!」


 そして、その弱体化した「怪異」の力では、正式戦闘服の防護を貫けない。


――小田切君、君はラッキーだな?――


 と、僕の友人、の「少し上」関係と言える、あの新宮神楽さん。


――君は、一人では怪異に勝てはしないが、死ぬことはないだろう――


 彼女の上官、今となっては、僕の上官でもある、その人が、少し皮肉げに、そう僕に言った事がある。


――ギィ、イィ!?――


 そして、僕が「意識」を向けて、弱らせた怪異を、他の。


「よし、小田切クン!!」


 強力な能力者、たとえば。


「後は、俺にまかせなっス!!」


 彼、見た目的に派手な能力こそないが、自分の身体能力を極限まで高められる、能力者である。


「そこらへんが弱点ス、餓鬼の筋肉がえぐれてるス!!」

「よし、支援射撃いくよ」

「イェイ!!」


 茶髪のチャラ男、身体的能力のみならず、視力などの「五感」すら、精密双眼鏡レベルまで引き上げられる、彼などの。


「僕の銃に当たるなよ!!」

「ダイジョーブ、俺の聴覚と触覚は、小田切クンの弾すら」

「そうだな、そうだった!!」

「見れる、ヨ!!」


 僕の能力の悪影響を受けにくい、このお調子者の相棒を含めた。


「フレンドリ・ファイアなど、当たる訳、ないス!!」


 彼ら、本当の「救世主」が、仕留める。


 スゥア、アァ……


 銃声、悲鳴、歓声。


「……新手だ、気を付けろ!!」

「了解!!」


 とどのつまり、怒号全てを覆い隠すほどに。


 スゥ、シャ……


「……今日は、メリークリスマス、か」

「小田切、横だ!!」

「……!!」


 シャン、シャア、ン……


 雪が、白い闇が増してきた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る