第6話「2061/4/30[統治地区TYO-第二指令室]」
「……ホウ?」
その、彼の「驚き」は演技である。
「その地区に、似非共の組織的な、潜伏先がありました」
「……そうか」
奴らの「隠れ里」など、とっくのとうに彼の抱える、秘密警察によって発見され。
――今の所は、放っておけ――
――……ハッ!!――
ほとんどの情報は、彼「獅子王」の耳に入っている。
「……だが」
「槍玉」が、民の捌け口が最近は少なくなってきた、その事は「王」も理解している。
「……異能者共の隠れ家を大々的に、驚異だとアピールすれば、臨時の新たな税金徴収の口実になるかも、しれん……」
そう、この統治区の行政も、到底上手く行っている訳ではない、むしろ綱渡りなのだ。
「……」
例えば、配給食料。
――王、もはや合成に必要な成分が、調達不可能です――
あまりの原材料不足がたたり、その食料に。
――奴等を混ぜろ――
――ええっ!?――
――……聴こえなかったのか?――
今は、何が含まれているかなど、この地区の者は知らない。
「……発電所を維持するその金、いや燃料すら、不足しているのだ」
そして、いまやこの「世」に対するテロリストと化している、救世主達。
――世界を、我ら上位の、救世主の物に!!――
「人類の敵」と、獅子王の主導で宣伝している彼ら、ではあるが。
「……」
もしも、彼らがいなくなれば、統治民の視線はおのずと。
――なぜ、我々はここまで、全てが、何もかも、監視されなくては、ならないのだ!!――
支配者の側に向き、不満を噴出させ、自分達の現状を認識し、そして。
――独裁者を、悪しき獅子王を倒せ!!――
と、何も後先を考えずに「革命」の狼煙を上げるだろう。
「……インフラ、すでに崩壊寸前のライフラインを」
そう救世主、異能者狩りは、とどのつまりは。
「誰が、手段を選ばずに無理矢理、生活を支えている、それも知らずに、な」
ガス抜き、なのだ。
「……俺は、俺を含めて全てが、必要悪だと」
人の世界を、護る為の。
「……そう、信じたいな」
あらゆる面において、ジリ貧である、この地区。
「……いや、このTYOだけではない」
この島国、いや世界全てが、もはや資源など枯渇し、汚染され尽くされ、どうみても。
――自然に生きよ!!――
――我々は人間、家畜ではない!!――
という「エコロジスト」の言葉など何の値打ちもない、あの怪異との「聖戦」の後こそが、本当の。
「……聖戦」
そして、それに負けた人類。
「そう、人類文明と、大自然との戦い、それに我々は敗北した……」
近い将来には破滅しかない、文明という「人間の自然」に支えられた、この人類社会。
「……ふん、自然派、か」
そう、自然、母なる大自然たる地球は。
「……その文明の否定をする、彼らを、愚民と言うのは容易い」
「母」は、人類に「死ね」と命じている。
「……だがな、昔の私も」
この傲慢不遜たる獅子王、彼にも、自然、天然、それが最良だと信じた、若造の頃があった。
「無知ゆえの、高校生故の、戯言だったな……」
そう、彼は軽く。
「……フフ」
獅子王は呟きつつ、自嘲しつつ、新たなタバコに。
シュウ……
軽く、火を炙らせる。
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