第3話「2023/1/13[転校生]」

 その、彼女の第一印象だけでも。


「こちら、今日転校してきた、新宮神楽くんだ」


 男子の目を釘付けにするほどの、綺麗な子。


「新宮神楽です、よろしくお願いします」


――ヒュー、ヒュー!!――

――……きょ、巨乳ちゃん!?――


 と、いう男子の声も。


――ちょっと、アンタ達!!――

――いきなり女の子の転校生に、ゲスい言葉、言うのは止めなさいよー!!――


 と、怒る女子達の声も解るほどの、美麗な転校生。


「そうだなぁ、では……」


 ただ、担任の隣にたたずむ、彼女の綺麗な顔には。


「……」


 何も、表情というものが無いのが。


「……そういう、子なのかな?」


 少し、僕には気になったが。


「小田切の隣が空いているな?」


――えっ!?――


 よりによって、僕の隣の席。


「いいね、新宮くん?」

「は、はい……」


 と、彼女はしとやかに、そう頷き、そして。


 スゥ……


 先の言葉遣い、その僕の近くに寄ってくる、静かな足運びも、しとやかとしか、言いようがない仕草で。


 スゥ、サァ……


「……あの?」


 そっと、その彼女は僕の隣に佇み、そして。


「……あの、ここに」

「……!?」


 僕に向かって、表情が無いまま、鈴がなるような声を、掛けてくる。


「ここ、座っても大丈夫かしら?」

「えっ、ああ……」


 と、そう彼女に言われても。


「う、うん……」

「……失礼するわね?」


 当然、そこは彼女の席だ。


「……」


 朝のホームルームの光りに輝く、綺麗な、流れる黒髪、どことなく気品のある立ち振舞い。


……コッ


 その彼女が、席についてシャープペンを握り。


 カ、サァ……


 簡素な鞄から、ノートを出すだけでも。


 フゥ、ア……


――……!?――


 何か良い匂いが、僕の鼻を差すような気がする。


――これが、オンナの匂い?――


 そして、教室中の男子生徒が、僕を羨ましそうに見詰めていて。


――よりによって、何で小田切の隣に……――


 加えて、それと同じ位に強い視線、それらを女子達が彼女に向けて。


――何か、無愛想な子ねー……――


 と、投げつけると共に、そのヒソヒソとした声に合わせて、はっきり言って、なんか。


 ジィ、トゥ……


 怖い視線で、この転校生の子を、見詰めている……


「……この現象は、社会史とも密接に」


 だけど、始まった先生の授業が、全く僕の耳に入らなくなるほど。


 カッ……


「……」


 本当に、ノートにペンを走らせる姿すら。


 カッ、リィ……


 綺麗な子だ。


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