第2話 大勝負は突然に


『へぇー私、馬券って宝くじみたいに

ただ買って当てたらお金もらえるものだと思ってたんですけど

種類がたくさんありますね。どうしようかな。』

桜庭さんがメモを取りながら思案している。


ブッコローの復唱をしながら確かに僕もこんなに種類があると思ってなかった


『『初心者にはやっぱり単勝か複勝かなぁー!当たりやすいからね!』』

ブッコローの声を翻訳する


『単勝か複勝だと当たりやすいと思います。』


『・・・一番難しいのってどれですか?』


『『おっ桜庭ちゃんは乗り気だねぇ!んー!やっぱ三連単かなぁ!

選んだ3頭が1着、2着、3着で指定した順番通りにゴールしないとだから中々当たんないよね!!』』

早速ちゃんづけで呼ぶなれなれしい鳥だ。


『三連単が一番難しいかと。選んだ3頭が1着、2着、3着で指定した順番通りに当たらないとだめなので難しいです。』


『なるほど。かける額って上限あったりしますか?』


『『下は100円から上限は無しだけど初めてなら少額からのがおすすめだよ!』』


『100円からで上限はないです。でも初心者は少額からがいいと思いますよ。』


『・・・わかりました。

あの、私、3連単で20万賭けます!

冴納さん!馬一緒に選んでくれませんか!』



え・・・



『『『ええー!!!20万!?』』』



驚き過ぎて僕もブッコローも結構な声を出してしまった。

ブッコローに至ってはリュックを飛び出して桜庭さんの前にでてきてしまった


『桜庭ちゃん!その心意気は好きだよ!でもそんな大金一気にかけちゃダメだよ!』


『え・・鳥・・・のぬいぐるみ・・・?』


『ぬいぐるみじゃない!ミミズクのR.B.ブッコロー!!!!!』



少々混乱が起きたがなんとか説明して桜庭さんの事情を聞くことにした。



『桜庭ちゃん。やっぱりそんな大金一気にかけちゃダメよ!

競馬何レースもあるんだからゆっくりじっくりちょっとずつ楽しもうよォ!』


『20万使うのはのは反対しないんだ・・・』


『えへへ・・・ありがとうございます。

冴納さん、ブッコローさん、でもいいんです。

お二人はこのお金が私が

一生懸命働いて貯めたものだと思って心配してくれているんですよね?』


『え・・・ちがうんですか?』


『・・・はい。このお金は『わたしのお金』じゃないんです』


『えっ・・・それってどういう・・・』


力なく笑った桜庭さんを察して『あ・・・無理に答えなくても・・・』

と僕が言った瞬間


桜庭さんは突然大泣きしだした。


『あああこのデリカシーなし鳥が失礼なこと聞いてすみません!!!!』


『ああ!?誰がデリカシーなし鳥だってぇ!?お前も気になってるだろうがァ!』


あたふたと慌てた僕らに少し落ち着きを取り戻した彼女は


『ふふ・・・ごめんなさい・・・ちょっと思い出しちゃって・・・・』

涙をぬぐいながらゆっくりと話してくれた



『このお金。婚約指輪を質屋で売って手に入れたお金なんです。』



ブッコローに耳打ちされ近くの自販機で温かい飲み物を買って桜庭さんに渡す。


『少しは落ち着きましたか?』


『はい。ありがとうございます。

・・・この20万は元彼が私に婚約指輪として渡したもので、

元彼は浮気して婚約は破談になってすべて捨てちゃおうって思って捨てて

でも指輪は『給料3か月分だよ』なんて言ってたしお金にしちゃえ!と思って質屋に持ってったら・・・』


『全然3か月じゃなかったと』


『・・・はい。なにからなにまで騙されてたんです。私。

だからもうこのお金が増えようが無くなろうがどっちでもよかったんです。』


『なるほど・・・・』

どうしよう。なんて声をかければいいのか全然わかんない・・・。


『なるほど・・・そのお金は元々桜庭ちゃんのものじゃないんだ。

そっか・・・・他人のお金で賭け事をするなんて・・・・


キミ、最高じゃぁあああ—ん!!!!!』


『え』


『よし!!ブッコローがそのお金何倍にもしちゃう!

最低な元彼なんて忘れてちゃえ!もう泣くのはお止め!

3連単めっちゃ本気であてに行っちゃうよォ!』


『はい!どどーんと!どーせはずれても誰も傷つかないので!おねがいします!』


桜庭さんまで・・・吹っ切れてノリノリだ。


『いずるぅ!なにボーっとしてんの一緒に作戦会議するよ!大勝負よ大勝負!』


『あっはい』


こうして僕たちの大勝負が始まった。

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