R.B.ブッコローは競馬場でキューピッドになりたい
たちばな
第1話 R.B.ブッコローはレクチャーする
その日僕は自分の目を疑った
『あぁー!!鳥は競馬場で馬券買えないなんて誰が決めたんだよぉ!』
大きなぬいぐるみが嘆くように喋っている
ぬいぐるみ?なのか?
なんかどこかでみたことがあるような・・・
ここは東京競馬場前。
僕は動画編集の仕事をしている先輩の手伝いで
サムネに使う競馬場の写真を撮ってこいと言われ
今ここにいる。手伝いというよりほぼパシリだ。
これ動画に撮ったらもしかしてバズる?撮るか?
なんて思案していたら
『そこの青年!馬券買いにきたんだろ!俺もいっしょに連れてってくれよぉ!』
『いや僕は競馬場の写真を撮りにきただけで・・・』
『写真!?競馬場まで来ておいて馬券買わない奴なんていんのォ!?』
よくしゃべるぬいぐるみだ・・・
『なにこれ電池どこについてんの』
『はぁ?ぬいぐるみじゃない!俺はR.B.ブッコロー!ミミズクだよ!』
『ミミズ?』
『ミ・ミ・ズ・クー!お前俺の事知らないの?youtube登録者20万人の鳥なのに!』
『20万人!?え?嘘だぁ!』
ぬいぐるみ・・いやR.B.ブッコローは俺の持ってたスマホをちょいちょいと操作し
youtubeから【有隣堂しか知らない世界】を表示した。
確かにサムネにこのぬいぐるみみたいなのが毎回でている。
youtubeのサムネで見かけたことだけはあったから既視感があったのか。
『本当にyoutubeにいる・・・』
『な?でさぁ青年。せっかく競馬場来たんだから一緒に中に入ってくんない?』
『え?なんで?そもそもなんで入口で騒いでたんですか?』
『いつもは人間と一緒にきてそいつに馬券買ってもらってたんだよ。それかネット購入。今日はちょっとそいつと喧嘩しちゃってさぁ。まぁ鳥だけでも買えるだろって馬券売り場までいったら鳥は馬券買えませんっておいだされちゃって・・・いつも買ってる太客なのに俺』
『じゃあ今日もネット購入すればいいじゃないですか』
『かーっ!これだからイマドキ男子はぁ!
競馬場まで来ておいて券売機で買わないなんてないだろぉ!』
『どっちも同じじゃないんですか?』
『ちがう!ぜーんぜん!
馬がそこにいるんだから馬のコンディションだって生でみれちゃうのよ!
てかキミィ!もしかして競馬場初めてか?』
『そうですけど』
『あぁー!じゃ、なおのこと中に入らなきゃだめだ!
ブッコローが隅から隅まで教えてあげちゃう!入ろう!』
『ええ?でも俺、写真先輩に確認しないと・・・』
『大丈夫!競馬場4時には閉まるから!』
『いやそういう問題じゃなくて!てか4時までいるつもり!?』
ブッコローは先ほど追い出されたので
僕のリュックに半分入りながら競馬場を案内した。
確かに馬の生の姿がみれたり歴代の馬の事が展示されてたり
競馬場のイメージは券売機とレース場だったが
意外と馬券目的ではなくても楽しめる場所が多く想像より広かった。
『ここ、ここよぉ!』
馬券売り場にやってきた。
『へーあれが自動券売機か』
早速発券機に行こうとした僕をブッコローが止める
『ちょいちょいその前に馬券の種類とか決めないと!知らないでしょ!キミ!』
『そういえばそうですね。種類とかあるんですか?
僕お金そんな持ってないんですけど・・・』
『大丈夫!馬券は100円から買えちゃうんだなぁ!』
『へぇー』
『あのぉ・・・』
その時後ろから声をかけられた
見ると少し疲れた感じの黒髪の女性が封筒を握りしめながら話しかけてきていた
女性が一人で競馬場にいるなんてなんか珍しい・・・
『競馬お詳しいんですか?』
『いや、ぜんぜっ・・・!?』
正直に答えようとしたら背中のブッコローからどつかれた。
『キミ!女性が困っているのにその態度はなんだよ!こういうのはチャンスだ!
聞かれてるんだから答えてさしあげろ!』
『でも僕は詳しくなくて・・・』
『じゃブッコローの後に同じように復唱して言えばいい』
『ええ~・・・?』
そういえばそもそもみんなこのリュックの声が気になったりしてないのだろうか?
まぁとりあえず言われた通り行動するか。
『えっと僕もそんなに詳しいわけじゃないんですけど・・・
え?まずは自己紹介しろ?あっすみません・・・
僕は冴納 出流(さえな いずる)といいます。』
『ぶっ!あだ名絶対さえない君じゃんwww』
ブッコローがリュックの中で笑ったのでイラッとした。
実際先輩からはそう呼ばれるが。
『あ、私は桜庭といいます。よろしくおねがいします。』
絶対に自己紹介いらなかっただろ!と思いながら
桜庭さんと馬券を学ぶ会が始まった。
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