深夜のお散歩・殺クマ事件

緋色 刹那

🕵️‍♂️

 深夜の散歩中、奇妙な看板を見つけた。

「"この先、クマ以外立ち入り禁止"?」

 進んでみると、昭和っぽい古い街に出た。木の電柱には「古出亜区こであく」とあった。

「コディアック? 知らない名だわ」

 その時、銃声が聞こえた。向かうと、一匹のクマが倒れていた。

「く、クマぁ?!」

 恐る恐る近づいてみる。クマはピクピクと動いていた。

 クマの体に触れた瞬間、バチッと音がして、私は意識を失った。目が覚めると、檻の中にいて……檻のにクマがいた。

「ま、またクマぁ?!」

「クマ警部だ! お前はクマ・殺容疑で逮捕されたのだ!」

「えぇ?!」

 クマ警部によると、私は被害者クマのそばで倒れていたらしい。手には凶器らしき拳銃を握っていて、逮捕の決め手となった。

「私、拳銃なんか持ってません!」

「人間はクマを危険視しているじゃないか」

「そう、だけど……私じゃない!」

 そこへ、新たなクマが現れた。

「彼女の言う通りです。真犯は別にいます」

「クマームズ君、突然何を言い出すんだね?」

 現れたのは、鹿撃ち帽とインバネスコートを身につけたクマ探偵だった。

「被害者クマは撃たれる前に、心臓麻痺で亡くなっていました。本当の凶器は拳銃ではなく、違法に改造されたスタンガンです。お嬢さんが倒れたのは、帯電した被害者クマの体に触れたせいでしょう」

「憶測だ。そんなスタンガンがどこにある?」

 クマ探偵はクマ型のスタンガンを見せた。

「こちらに。巡査クマの引き出しに入っていました」

「なんだと!」

 その後、私は釈放され、巡査クマは檻に入れられた。帯電した被害者クマの遺体を第一発見者に触らせ、罪をなすりつけようとしたらしい。

「真っ直ぐお帰り。古出亜区はクマの街だからね」

「はい。ありがとうございました」

 翌朝、クマ探偵に改めてお礼がしたくて看板を探した。でも、見つけられなかった。

 あの場所はクマの隠れ里なのかもしれない。


(終わり)

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深夜のお散歩・殺クマ事件 緋色 刹那 @kodiacbear

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