グッドアイデアを思いつくまで
坂本 光陽
グッドアイデアを思いつくまで
シナリオライターという因果な商売をしている。かつては憧れの商売だったが、想像以上に過酷な現場だった。連続ドラマのシナリオを頼まれると、朝から晩まで書き続ける生活が続くのだ。
書いては直し、書いては直し、そんなやりとりが半年以上つづく。並の神経では務まらないし、プレッシャーも半端ない。鋼の心臓が不可欠だ。
不眠不休は当たり前だし、書いていない時は、ひたすらグッドアイデアを探し求めている。誰かに助けを求めることはできない。プロデューサーがヒントらしきものをくれるが、それに飛びつくのは、俺の
だから、俺は歩く。歩いて、歩いて、ひたすら夜道を歩き続けるのだ。グッドアイデアを思いつくまで。ベターな展開を考え出すまで。視聴者の心に響くセリフを編み出すまで。
15分で思いついたという
厄介なのは、警察官から声をかけられたり、女性に不審者と思われたりすること。だから、大通りは避けて、路地を選ぶようにしている。
おかげで、近所の路地という路地は、すべて歩ききってしまった。最近は、かなり遠くまで歩いてしまい、帰りはタクシーに乗ることもある。
執筆の役に立たないことだが、深夜に散歩をしていると奇妙な出来事に出くわすことが多い。UFOが飛来して通行人をさらっていったり、妖怪が墓場で運動会をしていたり、銀色の巨人と怪獣が河川敷で戦っていたり……。
それを書けばいいと言われるかもしれないが、俺が書いているのはSFでもホラーでもない。若い女性をターゲットにした純愛ラブストーリーなのだ。UFOや妖怪、銀色の巨人、怪獣の入り込む余地はまったくない。
だから、俺は歩くしかない。グッドアイデアを思いつくまで、歩いて、歩いて、ひたすら歩くしかないのだ。
グッドアイデアを思いつくまで 坂本 光陽 @GLSFLS23
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