眠れない夜に

さいとう みさき

お嬢さん、眠れないのかい?

 また目が覚めた。

 時計を見れば深夜。


 もうすぐ受験だって言うのに最近よく目が覚める。

 無理矢理に眠ろうとしても眼が冴えて眠れない。

 これでは明日の授業にも影響が出る。

 

 追い込みの時期なのに……


 台所へ行って冷蔵庫を開ける。

 しかし何も無い。

 一瞬間考え近くのコンビニに行く事にする。




 そっと家を抜け出し夜の街に出る。



 そこは誰もいない静かな街並み。

 みんな寝ている。

 星も空気もみんな寝ている静かな街。



 と、気付く。


 知らない道を歩いている?


 振り返るとそこも知らない道。



「あ、あれ?」



「こんばんは、こんな所でどうしたのかな?」



 いきなりの声に小さく悲鳴をあげそうになる。

 そして恐る恐るそちらを見ると小学生くらいの男の子がタキシード姿で立っていた。




「お嬢さん眠れないのかい?」




 その容姿と物言いが合っていない。

 しかし不思議と怖くはない。


「あ、えっと、君こそこんな夜更けに何しているの?」


 小さな男の子なので襲われる心配は無いと思うと自然と会話も出来た。

 しかし男の子はにたりと笑って言う。


「お嬢さんがこちらの世界に迷い込んだのだよ? ここはお嬢さんのいる世界とは違う場所、早くお帰りなさい」


「はぁっ?」


 おかしな事を言っている。

 首をかしげるとその男の子は私の後ろに向かって指をさす。


「ほら祭りカクコン9が始まっている。物の怪たち参加者が騒ぎ始めている」


 私はそれを見て目を丸くする。

 それは正しく物の怪作者たち

 百鬼夜行とか言うやつだろうか?


 思わず悲鳴をあげそうになる。

 しかしその男の子はすぐに私の近くにまで来て口元に指を当てる。


「静かに、彼ら作者に気付かれるよ? そうしたらお星様をせがまれるよ?」


 怖くなってきて目をつぶる。

 すると男の子の声が聞こえる。



「これをあげるからお帰り」



 そう言って手に何かを握らせる。

 

 


 

 はっ!?



 気がつくと私はパソコンの前で寝落ちしていた。

 しかしその手にはマウスがあり、参加ボタンをクリックしていたのだった。


 


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眠れない夜に さいとう みさき @saitoumisaki

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