第2話

 件の雄三は貧しい寒村の生まれであった。幼いころから村全体が貧困に喘いでおり、子供たちは早くから働き手として扱われ、娘たちは早くから奉公に出される。現代とはかけ離れたような社会であった。雄三は杣人として生計を立てる父と母、幼い弟妹、そして年を重ねた祖父と暮らしていた。小学校は山の麓にあり、通学に一時間かけて山を下り、下校して山を登りながら木の実や山菜、時に果物を拾い糧の足しとする。それが平日の雄三、休日は働き手としての位置を失いつつあった祖父の代わりに父母の仕事を手伝う日々であった。それでも祖父は幼い子供らの世話役として、家での立場を維持していた。

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