探索の彷徨

Bamse_TKE

第1話

「またお散歩かね、雄三さん。」

 でっぷりと肥え太った体を揺らしながら青年介護士が微笑んだ。暗い廊下のなか雄三と呼ばれた老人は声がするほうへ振り向いた。そして先ほどの巨体介護士を見るとふう、とため息をつきながら首を横に振った。

「さあ、夜の廊下は冷えますよ。温かい布団に戻りましょう。」

 さきほどの介護士は優しく諭しているつもりでも、この図体を見て威圧感を感じない人間はおるまい。雄三は下を向いて呟いた。

「探さねばならねぇ。」

 ぶつぶつと呟きながら雄三は介護士に手を引かれ、自室へと戻っていった。深夜ながらも徘徊老人にうまく対応でき、自分のケア技術向上ににんまりしている介護士に連れられて。

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