真夜中の作業員

くすのきさくら

知らない世界

 静かな夜道。昼間だと聞こえないだろう自分の足音が聞こえている。


 俺は受験生。だが――特に将来これといったやりたいこともなく。ただ何となく勉強だけしていた。みんなが行くから――という感じだ。友達の中には先のことまで考えてしっかり計画をしている奴もいるが。今の俺。ホント何も浮かぶものがなかった。

 学校では少し前に、地元の会社の社長から話を聞く場などが設けられていたのだが。俺にはピンとくるものがなかった。ただ話を聞いていただけ。『きっかけは些細なこと――』とかなんかいろいろ話していた気がするが。話を聞くだけではなんか実感がないというのか。わからなかった。あれで何かを感じる生徒もいたのだろうが。

 多分これは俺が何にも興味が無さすぎるのが原因だと思うが――でもね。ホントなんかお先真っ暗――というとすでに諦めた。受験失敗とか思われるかもしれないが。それに近い今の俺、特に先の事で思うことがなかった。

 ちなみに今はなんとなく勉強していたら疲れたから。外でも歩いてみるかと外に出て歩いていたところ。特に行先はなかったので、普段通学で利用する駅まで行って、戻って来るつもりだった。


 ガガガガガガ――。


 すると、角を曲がり線路沿いの道に出た時だった。こんな時間に道路工事でもしているのだろうか?。大きな音が聞こえてきた。さらに――。


 カンカンカンカン……。


「こんな時間に?」

 

 近くの踏切まで鳴りだした。音の方を見ると――眩しかった。そして普段は見ない車両が走っている。その周りでは何人もの作業服を着た人が作業をしていた。

 俺はその光景からしばらく目が離せなかった。何故かって?驚きだったんだよ。こんな時間にこんなことしている人がいるなんてな。いつも使っていたが知りもしなかった。そして――かっこよかった。


 きっかけは些細なこと――翌朝俺は早々に親に今後のことを相談したのだった。


(了)

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真夜中の作業員 くすのきさくら @yu24meteora

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