ねこ議会

金澤流都

ね、猫がしゃべった!!

 ヤバいものを見てしまった。

 猫が集会をするという話は聞いたことがある。だけどその猫集会はどこか異様だった。近所の、完全屋内飼いの猫――飼い主と獣医さんで知り合って、さんざん自慢されたマンチカンのベリーちゃんまでその集会に参加していたのだから。

 僕と僕の飼い犬の豆助は、その空き地の猫集会をビビり顔で見ていた。見ているうちに豆助はもう完全に帰りたい顔をしていた(深夜に散歩をしたがったのはお前だろうに、と思った)が、しかしその異様な光景に、僕の目は釘付けになっていた。


「えー本日の議題は『料亭はる野』の女将さんが用意してくれるキャットフードの、公正な配分についてです。なにか意見のある猫は挙手してください」

 議長らしい、でっかい野良猫のオスが言う。はい! はいはい! と手があがり、

「ではベリー議員」と、僕の知っているマンチカンが喋ることとなった。

「正味の話、それって野良猫にしか関係ないことじゃないですか? いま議論する必要あります?」

 と、ベリーちゃんは自分可愛がられてるんで、とマウントを取りにいった。

 すると議場になっている空き地の至るところから、

「人間に寄生してる飼い猫め!」

「俺らには切実なんだぞ!」

 というヤジが上がる。

「でもいまこの議場の半分以上が飼い猫ですよ? 議論する必要あります? 当事者だけで委員会とか発足すればいいじゃないですか」

「確かに」と猫の誰かが言う。「そうだそうだー」とヤジも飛ぶ。

「じゃあ料亭の女将さんが用意してくれるキャットフードを食べている猫だけ残ってあとは帰ってください」と、議長が言うと、半分ほどの猫がバラバラと空き地を出ていった。

 残った猫たちは「やはり飼い猫党は厳しさを知らんのですなあ」などと言っている。


 ふと足元を見るとベリーちゃんがいた。「この猫議会は、人間のママには内緒でお願いしますね」と言って、ベリーちゃんは去って行った。

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ねこ議会 金澤流都 @kanezya

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