第11話 策略と謀略の交わる開戦

明朝、敵軍の偵察に行かせた兵から、報告が入る。敵、メラーン国軍はツネキ平野の中央辺りに、テントを張り、夜を明かしていたらしい。テントの周りはゴブリンの群れが囲っていて、そのテントを守っているという話だ。




私と、ギッガ、虎兵衛が率いる騎士団はその近くまで、敵に見つからない様に馬に乗り、ゆっくりと進撃する。




「すまぬな、ギッガ。拙者、乗馬は苦手で一人で乗れないのでござる」


虎兵衛とギッガは二人乗りで、馬に乗っている。もちろん馬に一人で乗れない虎兵衛は、ギッガの後ろにくっついている感じだ。




「気にするな。戦場に着いたら、しっかり働いて貰うからな」


「任せるでござる」




二人は言葉を少し交わした後、無言になる。敵の近くまで迫っている。否応なしに緊張感が高まっているのが、私にも伝わる。




敵がいると思われる地点を、私は見回す。報告にあったテントは確かにあるが、守りのゴブリン達がいない。




「妙だな、敵がいないぞ」


ギッガも必死になって辺りを見回し、敵を探す。




「嫌な予感がするでござる・・・・」


虎兵衛はアゴに手を当て、目をつぶり考え込む。




その時、後方からドーンという爆発音が鳴り響く。と同時に、後方の騎士団の部隊が吹き飛ばされる。




私は目を見開き、爆発音のした方向を振り返る。爆発音をした辺りの大地は、焦げた様な後が見られ、吹き飛ばされた騎士達は炎に包まれている者がいた。




炎による攻撃・・・。私は、直感的に敵の魔法による攻撃だと判断する。




「敵の魔法よ。みんな警戒して!」


私が、そう言った瞬間、第二擊目と思われる大きな炎の玉が空から降って来る。




再び、ドーンという爆発音が鳴り、騎士達がまた蹴散らされる。私は、頭が真っ白になり、どうしたらいいのか分からなくなる。




「あそこでござる」


虎兵衛が、小高い丘になっている所を指を指す。そこには人だかりが出来ており、その中心に魔法使いらしき者がいた。






「残念でしたぁ。奇襲攻撃するつもりが失敗して、逆に返り討ちに合いました。みたいな感じか?みんな、絶望に満ちた、いい顔してるよ。ヒヒヒ」




丘の上の黒いローブを纏っている魔法使いらしき男が、こちらに向かって話し掛けている。その横には、何処かで見た事のある、カラフルな衣装を着た者達が笑っている。




軍議に参加して、虎兵衛にやたら食って掛かっていた、あのカラフルな我が国の貴族達であった。私は何故、奇襲攻撃が見破られたのか、訳を悟った。




「あなた達、裏切って、敵に情報を与えたのね?」


私は魔法使いの横にいる、寝返った貴族達を睨む。




「だって、どちらに付けば得か、明らかでしょ。やっぱり、貴方達はバカなんですよ」


カラフルな貴族達はみんな丘の上から、私達を嘲笑って、見下している。




「何、言ってるの?僕ちゃん、お前ら全員、皆殺しにしようと思ってるの。だから、カラフルなお前達も例外無く死ぬんだよ」


敵の魔法使いムークは貴族達の方を見て、ニッコリ微笑む。貴族達は青ざめた顔をし、慌て出す。




「バカな。約束が違うぞ。我等の作戦を教えたら、私達の命を保証してくれるという話ではなかったのか?」


「僕ちゃん、約束は守らない主義なんだ」




と言うと、ムークがゴブリン達に合図をする。すると、ゴブリン達が貴族達を丘の上から突き落として行く。貴族達は悲鳴を上げた後、地面に身体を叩き付けられ、命を落とす。




私達、騎士団は周りをゴブリンの大群に囲まれ、小高い丘の上から、敵の魔法使いに炎の魔法で狙撃される形になってしまった。まさに文字通り、敵の罠に落ちてしまったのである。




「皆の者!作戦変更でござる。敵の大将に向けて列になり、一点突破するでござる。先陣は拙者に任せるでござる。拙者に付いて来いでござる」




虎兵衛はそう言うと、ギッガの馬から飛び降り、敵の大将ムークのいる丘に向かって走り出す。もちろん、丘までにはゴブリンの大群が待ち構えている。






私達の戦いは不利な状況で、開戦した・・・・。








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