第9話 決戦、前日
「待てっ、このエロ侍!私達の考えた籠城作戦が何故、愚策なのだ。説明しろ!事と次第によれば、貴様の首、跳ねてくれようぞ!」
カラフルな貴族達は、全員、顔を真っ赤にして、怒り狂っている。
「耳の穴をかっぽじって、聞くでござる、バカ貴族ども!まず、この城と街の壁は、脆弱過ぎる。援軍も来ない。だから、籠城すると瞬殺されるでござる。しかも、ここの兵は弓もダメ、魔法もダメ、遠距離攻撃が鼻くそでござる。ハッキリ言うでござる。籠城すれば、敵の魔法使いの格好の魔法の的になって、全滅するでござる」
虎兵衛も、興奮気味に貴族達を論破する。私は、虎兵衛の意外な分析力を目の当たりにし、驚いて彼の顔を思わず見てしまう。
「では、貴様の策というのは何だ?言ってみろ!」
貴族達が議論に負けない様に、必死で言い返そうとしてくる。
「野戦を仕掛け、奇襲攻撃するのでござる。全員で魔法使いのみをターゲットと定め、色んな方向から攻めるでござる」
「な、それではこちらとて、犠牲者が大勢出るではないか!それに奇襲とは卑怯な、騎士道にあるまじき行為だ」
虎兵衛の策に、貴族達が反論してくる。
「これは、戦争でござる。今回の戦いは、こちらも無傷では、終わらせる事が出来ないでござる。それに、相手さんが、他人の国に勝手に土足で踏み込んで来てるのでござる。そこを奇襲攻撃して、卑怯だと言われても説得力がないでござる」
私は虎兵衛の策を聞いて、なるほどと、納得をする。そうなのだ、この戦いのポイントは、相手の魔法使いを討てるかどうかの一点のみなのだ。籠城では、敵の魔法使いは倒せない。
「私は、虎兵衛の策に賛成です。勝つ為には、それしかないと考えます。他の方の意見は?」
私は席を立ち、皆を見回す。全員、下を向き、険しい顔で考えている。失敗すれば、死。簡単な決断ではないのだ。反論をしていた貴族達も、死にたくないので、真剣に悩んでいる。
「皆が悩んでおるので、ワシが決断せねばならぬな。その侍の策、気に入った。敵国に対して、野戦にて奇襲攻撃を仕掛ける。皆のもの、良いな?」
父である国王が席を立ち、場を仕切る。最高権力たる、威厳のある態度だ。
王族と貴族達は、正しい答えが分からないので、王に従おうと考えているみたいだ。皆、うんうんとうなずいている。彼等はその方が責任も掛からないし、楽なのであろう。
「それでは、準備が整い次第、出発せよ。騎士団長よ!」
国王が、騎士団長ギッガに指示をする。ギッガは、はっと大きく返事をし、会議の間を急いで出て行く。
私はもう一度、虎兵衛の方へ顔を向ける。この男、ここへ私に召喚されるまで、どんな戦場と修羅場をくぐって来たのであろうか。戦いをよく知っている。ただのエロい侍ではないと、私はまた彼について考えさせられてしまう。
「国王殿、今度の軍の話し合いは、戦争の事以外が良いでござるな」
虎兵衛は、国王の席の方へ歩み寄り、提案をする。
「ふむ、例えば、どんな事を議題にするのだ?」
国王は興味深そうに、虎兵衛をチラリと見る。
「女の子に履いて欲しい下着の色は何色で、熱く議論したいでござる」
「何だと?ふざけておるのか?・・・・・ちなみに、貴様は何色だ?」
「拙者は赤でござる」
「ワシは黒じゃな」
「・・・・・・・・」
「侍よ、そちも相当のエロよのぉ」
「いえいえ、国王殿こそでござる」
『フォッフォッフォッフォッ』
男達は分かり合った様で、二人は満面の笑みをしている。私やその他の会議の出席者は、冷たい視線で彼等を見ていた。
そして、軍議は終わった・・・・・・。
その日の夕方、私は城の自室で休んでいた。すると、国王である父が私の部屋を訪れて来た。
明朝、この国の騎士団達は敵国の軍に向けて、出発すると父から聞かされる。私は、その軍に加わりたいと志願する。この戦い、負ければ私達に明日はない。
私は、自分の魔法がこの戦いで役に立つからと父を説得する。父も最初は、その案にあまり乗り気ではなかったが、私の熱意に押され、しぶしぶ了承をした。
私は戦いの直前、虎兵衛と話がしたかった。私は、城の何処かにいると思って、彼を探した。
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