第6話 チンポジの世界

「決闘・・・?嫌でござる。面倒臭いでござるよ」


虎兵衛は、ギッガの挑発を受け流すように対応する。




「腰に差している貧相な剣は飾りか?男なら剣を抜け!」


ギッガはなおも頭に血が上り、虎兵衛を挑発する。




「ギッガ、止めなさい!」


私はまずい雰囲気だと思い、急いで止めに入る。




「エリール様、これは男と男のプライドの話。少し、外して頂けますかな?」


ギッガは私の方に向くと、優しそうに話すが、虎兵衛の方を向くと、鬼の形相になる。




「これは、貧相な剣ではござらぬ。刀という侍の武器、魂でござる。それに、この刀は、女の子の服のみを斬る為に、使うと誓っているのでござる」




虎兵衛は、至って冷静にギッガに話す。




「フッ、所詮、そんな下らぬ事しか出来ぬ、偽りの剣士よ。この国を去れ。怪我をしたくないならな」


ギッガは、虎兵衛を見下したような目で見る。




「ギッガ!引きなさい!」


私は再び、ギッガに向かって叫ぶ。




「お主は少々、痛い目を見ぬといけないようで、ござるな。拙者、遊びでは刀は抜かぬ。決闘というからには、命を懸けるでござるよ。つまり、負けた方が死ぬのでござる。よろしいか?」




逆に、虎兵衛がギッガを挑発をする。私は、この状況を止められない事に困惑する。




「もちろんだ。負けた方が死。決闘成立だな。明日、夜明けに、剣術修練所で!逃げるなよ、侍!」




と言い放つと、ギッガは立ち去って行った。




「何で、決闘なんか受けたのよ。バカなの?虎兵衛、お願い!止めてよ!」




私は、必死で虎兵衛を説得する。でも、無言の虎兵衛の顔を見た私は、説得は無理だと感じる。




覚悟を決めた男の顔をしている。こんな顔をしている男には何を言っても、聞かない。過去の経験から、私はそう感じ、諦めるしかなかった。










翌朝、剣術修練所には、多くの人が集まっていた。我が国最強の騎士と、異国から来た侍の決闘を見ようと皆、早起きをしていた。




集まっているのは、騎士団の者達や、血の気の多そうな男達がほとんどだ。私も、もちろん、この決闘の事が気になり、立会人として見る事となった。




もうすでに、虎兵衛とギッガは、修練所の中央で睨み合い、観客達はそれを円で囲む様に見ていた。




「よく、逃げなかったな。そこだけは褒めてやろう」


ギッガは全身を鉄の鎧で固め、バスタードソードと呼ばれる、両手持ちの重量のある剣を、腰に差している。




一方、虎兵衛はいつもの薄い着物と、腰には刀を一振、差しているだけだ。


「女性の観客が、ほとんどいない・・・。期待が外れたでござる。やる気が出ないでござる」




この侍、この場でもそんな事を言ってるのかと、私は呆れてしまう。




「それでは、行くぞ!」


ギッガが剣を抜き、重々しい剣を構える。




「ちょっと、待つでござる!」


「臆したか?侍!みっともないぞ!」


「チ、チンポジが収まらないでござる」




急に、虎兵衛がギッガに待ったの姿勢を取る。


私は不思議に思い、大声で質問する。


「ちょっと、チンポジって何なのよ?」




「おチ○チ○のポジションの事でござる。良い位置に収まらなくて、気持ち悪いでござる。これでは、決闘に集中出来ないでござるよ」




虎兵衛は嬉しそうに、私に解説する。私は、大声で聞くんじゃなかったと恥ずかしくて、顔が熱くなる。




「チンポジを気にしている男は騎士として、斬れぬ!早く直せ!」


ギッガは剣を鞘に収める。




虎兵衛は、かたじけないと言って、股間をいじり始める。




ギッガは虎兵衛が一生懸命、股間を触っているのを確認すると、スッと虎兵衛に背を向ける。




「ほぅ、このチンポジを直す情けない姿を、あえて見ない様に背を向けるとは・・・・。男の仁義を知っている男。久々に真の男に、出会ったでござる」




虎兵衛は股間をいじりながら、ギッガを見据える。


私は、この光景を唖然として、見ていた。




この二人の世界観は、私が女だから分からないのであろうか?いや、違う。私は先の考えを否定する。




きっと、この二人が変態だから、私には分からないのだと解釈しよう。その方が楽だ。考えても余計に分からない。




「きたーっ、チンポジが良い所に!」


虎兵衛が、嬉しそうに叫ぶ。






こうして、侍と騎士の決闘が再開される。




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