第3話 エロ侍の街での行動
私は侍、虎兵衛の行動を制限せずに、城の中や、街の中を自由にさせた。客人として扱うと言った手前、拘束したり、行動を禁止するのは、筋が違うと思ったからだ。
だが、それがいけなかった・・・・・。
「どうじゃ?そこの彼女。拙者に服を斬らせてもらえぬか?ちょっと裸になるだけでござる。イヤーンと言って欲しいのでござる」
このエロ侍、もとい虎兵衛は、城や街にいる女の子達に、手当たり次第に声をかけまくる。
「嫌よ!この変態!近寄らないで!」
当然だ。女の子達は皆、この反応だ。
「そこを何とかして欲しいでござる。痛くしないので頼むでござる」
このエロ侍、なかなか引かない。まるで、しつこいナンパ師のようだ。一体どんなメンタルをしてるんだ、と私は思う。
「お、これはエリール殿。ひょっとして拙者に、服を斬られたいのでござるか?他の女の子に声をかけておったので、嫉妬してるでござるか?」
「な、私は戦争の準備で忙しいのよ。あなたもバカな事ばかりしないで、ちょっと手伝ってもらえないかしら?」
「嫌でござる。戦争なんて面白くないでござる」
と言って、虎兵衛はまた別の女の子の所へ行く。ホントに自由気ままな男だ。
* *
また、ある時はこの侍、意外な一面を見せたりする。
「子供達よ、拙者と遊んで欲しいのでござる。誰も相手にしてくれないでござる」
虎兵衛は子供達の集まっている所へ行き、彼等に声をかける。
「ダメだよ。お母さん達に言われて、お手伝いしないといけないんだ」
子供達は、戦争の準備をしている大人達の手伝いをしているのだ。その位、今この国は危険な状態なのだ。
「えーっ、子供達は遊ぶ事が仕事なのでござる。拙者と遊んで欲しいのでござるよ」
私はそんな子供達と侍を見て、どっちが子供なんだかと呆れてしまう。
ふと気付くと、子供達が私の方を見てる。私に遊んでいいのかどうか伺っているみたいだ。
「いいわよ、みんな。あの侍と遊んであげて」
と言うと、子供達は嬉しそうに侍の元へ走り出す。
「そうか、遊んでくれるのか?では、拙者が鬼になるので、子供達は捕まらぬように逃げるでござるよ」
侍、虎兵衛は笑顔でそう言うと、子供達を追い掛けて行く。子供達はきゃあと言いながら、楽しそうに逃げる。この侍、子供好きなんだと、ちょっと私の見方が変わる。私はそんな様子を微笑みながら見ていた。
子供達は遊びたがっていたのだ。それを大人の事情で禁止されていた。あの侍はそれに気付いていたのだろうか?私は子供達に対する申し訳なさと、少しだけあの侍に心の中で感謝した。
* *
その頃であろうか?私がこの侍に興味を持ち始めたのは・・・・。
ある日、私が郊外にある、騎士団達の詰所に行く最中の出来事である。
「ねぇ、エロ侍。何でいつも女の人を、追い掛け回してるの?」
何やら、虎兵衛の周りに子供達が集まり、話をしている。すっかり彼は、子供達の人気者になっているようであった。私は、この様子が気になり、足を止める。
「これ、子供達よ。誰がエロ侍でござるか?拙者には虎兵衛と言う、イカした名前があるでござる。それにエロい事は良いことなのでござるよ」
「え、何で?女の人は嫌がってるみたいだけど・・」
「拙者の国には、この様なことわざがある。"健康無くして、エロ無し!"。つまり、エロい事は元気であるという事。良い事なのでござる。それに、拙者が女の人を追い掛けるのは、その人が魅力的だからでござるよ。女の人は嫌がってる振りをして、実は嬉しいのでござるよ」
「ふーん、よくわかんない」
子供達は虎兵衛の話に首を傾げている。私もこのバカ、子供達に何の話をしてるんだ、と思ってしまう。
「あ、エリール様だ」
子供の一人が私を発見し、小走りで寄って来る。ホントだと、他の子達も続いて私の元へ来る。そして、虎兵衛がゆっくり私に近付いて来る。
「子供達よ。そなた等はエリール殿が好きなのでござるか?」
「うん、キレイだし、スッゴく優しいの」
「なるほどな。エリール殿は子供達や民から、好かれておるでござるな。拙者の仕えていた殿様とは違うでござるよ。拙者もこの国が好きでござる」
私は他国の人からそんな事を初めて言われ、少し照れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます