第2話 女の子の服のみを斬る剣技
この男、服装は東洋の服らしき物を着て、髪の毛は変な感じに、くくってある。腰には細身の剣のような物を差しており、二本の棒で器に入った白い粒々の食べ物を食べている。
「あなたは何者なの?答えなさい」
私は召喚された変な格好をした男に、再び話し掛ける。
「人に物を尋ねる時は、自分から名乗るのが礼儀でござろう」
男はあぐらをかいて座っており、こちらをジロリと見ながら、食事を続ける。
「さっき、言ったわよ。聞いてなかったの?私はこの国の王女のエリールよ」
「あ、すまぬ。聞いておらんかったわ。拙者の名は虎兵衛。侍だ」
「侍?侍って何よ?」
「知らぬのか?刀を持って戦うカッコいい者の事だ」
私は愕然とする。魔法使いじゃない・・・。どこで間違えたの?いや、魔法がもしかして使えるかもと、淡い期待を持って質問する。
「あなた、魔法は使えるの?」
「魔法とは何だ?妖術の事か?拙者は侍だと言うておろうが。使える訳ない」
侍と名乗る男はちょっと不機嫌そうになる。
「その髪型とその服は何なの?正直今まで見たことないわ」
「この髪型はちょんまげと言って、トレンドの最先端なのでござる。この服は着物と言うのだ。オシャレを理解出来るか?小娘」
私は小娘と言われ、カチンとくる。それにどこがオシャレなのよとイラッとする。
「じゃ、その細い剣は何なの?あなた剣士なの?」
「だから、拙者は侍と言っておろうが。この腰に差してるのが刀。太刀でござる。本当に物を知らぬ小娘だな」
「小娘、小娘ってうるさいわね。つまり、あなたはその剣で戦えるけど、魔法が使えない訳なのね」
私は最悪の事実を突き付けられる。召喚は失敗したのだ。手にある魔石は粉々に砕けている。もう、やり直しは効かない。
「少しだけ違うぞ。我が刀は戦い、人を斬る事を極意とはしておらぬ」
「じゃあ、何の為に刀を身に付けているのよ」
侍と名乗る虎兵衛は、ちょっと勿体つけて語る。
「我が剣術は、女の子の服のみを斬り、裸にする事を極意としているのでござる」
虎兵衛はニッコリとした表情で私に語る。私はその言葉にドン引きしてしまう。
「そして、その裸の女の子が、イヤーンと言ってくれれば、最高なのでござる。拙者はその為に命を懸けても良いのでござる。命を懸けても・・・良いのでござる・・・」
「何で今、二回言ったのよ!しかも、二回目はちょっと溜め気味に格好付けて!!」
私は思わず、その侍に突っ込んでしまう。この男、エロい上に変態だと私は確信する。とんでもない奴を召喚してしまった。私は半ば諦めながら、侍に頼みごとをしてみる。
「今、我がドンウ国は、隣国のメラーン国に攻められて、大変なの?もし、あなたが強い侍なら、私達に力を貸して欲しいの。助けて欲しいの」
「嫌でござる。何故、拙者が縁も義理もない、この国の為に、命を懸けて戦わねばならぬのだ。拙者は自分の家に帰りたいのでござる。早く戻してくれ」
私は確かに、自分達の事しか考えていなかった。この侍からしたら、急に右も左も分からない国に呼び出されて、戦えとは理不尽な話だ。
「ごめんなさい。手違いであなたを呼び出した事を謝るわ。重ねて申し訳ないのだけど、あなたを元の場所に戻す方法が実は分からないの。あなたの事をこの国の客人として扱うので、何か不自由な事があったら私に言って。とは言え、今、この国は戦争真っ只中だから、してあげれる事は限られてるのだけど・・・」
侍は無言でうつむく。やはり、元の住んでいた場所に戻れない事に、ショックを受けているのだろうと私は同情してしまう。
「それでは、お言葉に甘えて、そなたの服を斬らせてくれい。そして、イヤーンと言ってくれい」
侍は笑顔で私に頼んでくる。とんでもなく、いやらしい表情だ。少しでも同情したことを私は後悔する。
「絶対、嫌よ。この変態ザムライ!!もう、勝手にしなさい!」
私は怒って、魔法修練所から出て行く。侍はポツンと一人部屋に取り残される。
それが、私と彼との最初の出会いであった。
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