永遠の約束~幼なじみに振られた俺には、もっと可愛い婚約者がいたようです~
秋作
永遠の約束~幼なじみに振られた俺には、もっと可愛い婚約者がいたようです~
第1話 婚約破棄!? ……いいえ、単に振られただけです
「ケンリック兄様、あなたがこんなに恐ろしい方だとは思いませんでした。私にはもう正式な婚約者がおりますので、近づかないでくださいませ」
その日、俺は幼なじみの婚約者、エレーヌ=ビターニュ伯爵令嬢に婚約破棄を言い渡された。
いや、正確に言うとまだ口約束だったので、正式な婚約者ではない。
だから婚約破棄とは言いがたい。
俺は公衆の面前で幼なじみに振られたのだ。
本当はこの王室主催の舞踏会で、エレーヌに正式な婚約を申し込むつもりだったのに。
まさか既に婚約者がいるとは思わなかった。
「私、ブリュシュ侯爵家のモルガンは、ビターニュ伯爵家令嬢と婚約することを正式に発表する」
エレーヌの肩を抱き、声高に宣言したモルガンに、拍手を送る周囲の貴族たち。
そんな俺を哀れみの目で見る者たちもいた。
周囲にいた貴族達はひそひそと話をする。
残念ながら耳がいい俺にはひそひそ話も丸聞こえだ。
『やはりケンリック公子よりも、モルガン公子を選んだか。エレーヌ嬢は』
『無理もない。あんな野蛮な人間』
『魔物の首をとった時のケンリック公子の顔は、本当に悪魔のようだったと聞く』
実家であるリーベル家は代々将軍を輩出するほどの軍人貴族だ。
俺は国王の命令に従い、領土を荒らす魔物達を倒してきた。ただ、騎士団の隊長としての責務を全うしただけ。
しかし魔物を倒した時に返り血を浴びてしまい、俺の形相は悪魔のようだったらしい。
以来、社交界では俺のことを鬼、悪魔と呼ぶようになった。
エレーヌもそんな噂を聞き、俺との婚約は嫌になったのだろう。
早々と別の貴公子に婚約を申し込み、正式な婚約をしてしまったようだ。
相手の婚約者、モルガン侯爵令息はニヤッと笑い、小馬鹿にした眼差しを俺に向けていた。
元々、俺との縁談はエレーヌが父親であるビターニュ伯爵に強請ったものだ。
“娘がどうしても結婚するのならケンリック兄様が良いと言って聞かないのだよ。娘の願いを叶えてくれないかね?”
エレーヌのことは妹のように思っていたし、どうせ政略結婚をするのなら気心知れた者同士の方が良いだろうと思い、俺はそれを了承した。
折を見て正式な婚約を申し込む、とビターニュ伯爵と約束していたのだが、そのビターニュ伯爵は素知らぬ顔。
俺のことは最早他人の扱いなのか、冷めた眼差しでこっちを見ていた。
俺は拳を握りしめる。
何故、お前達を守る為にこっちは戦っているのに、そんな風に恐れられないといけないのか?
俺は理不尽な思いに唇を噛みしめながら、舞踏会会場である王城の広間を出て行った。
それ以来、俺は社交界へ出ることはなくなった。
剣術や武術の鍛錬に勤しみ、騎士としての仕事を全うする毎日。
誰かとの結婚も考えなくなった。
そして半年が過ぎ、恋愛や縁談にも縁がないまま、俺は二十五歳になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます