それぞれの想い
第57話 それぞれの想い ~麻乃 1~
数日後、珍しく麻乃は修治と別行動で、西区に残っていた隊員たちと一緒に中央へ移動し、会議室で新人たちと顔合わせをおこなった。
元からいた隊員たちも予備隊や訓練生に知った顔が多いようだ。
とりあえずは
下は十八歳、上は三十六歳までと幅が広いぶん、経験不足を補うには十分だろう。
「さて……三日後から訓練を始めるんだけど、まずは西区の大演習場で、第四部隊と一緒に十五日間のサバイバル演習をおこなう」
サッと古株たちの顔色が変わったことに気づいて、麻乃はニヤリと笑ってみせる。
「十人一組で全五組に分かれてもらうんだけど、経験の浅いものもいるからね、古株の十人を二人ずつ頭にして、なるべく能力が均等になるように振りわけた。第四部隊のほうが古株の人数が多いから、経験では多少は不利になるかもしれないけど、演習が始まれば条件はみんなが同じだ。臆することなく、しっかりやってほしい」
順番に名前を呼びながら、班わけをしていく。
全員がどこか不安そうな表情を浮かべているのが面白い。
演習は道場でも訓練所でも行われるのでなんの疑問も抱かないんだろうけれど、サバイバル、という言葉がどうも引っかかっているらしい。
麻乃自身も最初に聞いたときは、一体、なにをさせられるんだろうか?
と思ったくらいだ。
しかも、サバイバル演習に参加した戦士たちは、決してこの存在を語らない。
耳に覚えがないから余計に不安になるのだろう。
「そんなに構えなくても大丈夫だよ。文字通り、いつもの演習にサバイバルの要素がくっついただけだからさ。期間も本当は最低でも二十日以上ほしいところだけど、今回は十五日間と短いしね。何かわからないことがあったら班の古株に聞くといい」
十名の顔を見回すと苦笑いで見返してきた。
何度か経験している彼らにしてみれば、いろいろと思い出すことがあるんだと思う。
「取り敢えず当日まではのんびりして、体調を整えておくように。体を壊して演習に出られません、なんてシャレにもならないからね。それから今度の演習は西区の各道場から、師範の方々が応援に来てくれることになっている。気を抜く暇はないよ。それじゃあ、当日は西詰所前に午前八時集合だから、くれぐれも遅れないように」
解散をさせて会議室を出ると、古株の
「隊長、今回の演習ですけど……」
「うん、小坂の班と杉山の班、女の子がいるんだよね。一つの班にまとめると負担が大きいから、最古参のあんたたち二人に分けたんだ。すまないけど、よろしく頼むよ」
「それはいいんですけど、さすがに最初から十五日は女にはキツイんじゃないですか?」
「それについては当日にいうつもりだったけど、数日おきにあたしが直接、様子見にいくから。場合によっては一日、二日あずかるつもりだけどさ、最初からそれがわかってると甘えが出るから黙っててよね」
それを聞いて、二人はホッとした表情を浮かべた。
「本当はもっと時間をかけたかったけどさ、なにしろ早く仕上げないといけないし。あたしのときなんか四十五日だったことを考えたら楽なもんだよ」
「一カ月以上ですか? 尋常じゃない期間ですね」
「それから、さっきも言ったけど今回は各道場から師範も参加するから密度が濃いよ。あんたたちも、しっかり気構えしとかないと、きっとひどい目にあうから気をつけてよね」
「わかりました」
軍部を出ると、ちょうど修治の部隊も顔合わせを終えて出てきたところだった。
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