第24話 幼き精鋭たち ~洸 1~
「
様子を見にいっていた
今、この場には残った六人……
琴子が時計を見た。
「まだ一時間半しかたってないよ」
「手負いとは言え、やっぱり蓮華だってことか?」
「だけどすげぇ頼りなさそうに見えたぜ?」
みんな口々につぶやく。
指笛が聞こえてからずっと、勝也との連携で動きを探り、チビたちから順番に相手にしていたのは知っていた。
洸たちが近づくと、さりげなく間合いを引き離されたことにも気づいていた。
正直、最初は十三、十四歳組あたりが、奪うことは無理だとしても、先っぽくらいは落とすと思っていた。
自分たちが出るまでもないだろう、と。
だから今回の演習に参加するのはやめにして、森の一番奥で終了の合図を待っていた。
それが蓋を開けたら短時間で、ほかの全員が組ひもを奪われている。
耕太が腰をおろしていた切り株から立ちあがった。
「洸、どうする?」
「一気に攻めよう。俺たちが全員でかかれば、楽勝だ。二人ずつ組んで近づこう」
みんなを寄せ集め、声をひそめて言うと、顔を見合わせたそれぞれが小さくうなずく。
今の時点で、この近隣の道場では洸たちが一番できると、合同演習のたびに思っていた。
大人が相手でもそう簡単に負けない強さがあるはずだと自負している。
今年、洗礼を受ける十六歳組みの中で、ここにいる五人は絶対に印を受けると、洸は自信を持って言える。
「だいたい、みんな気を抜きすぎなんだ。いくら相手が弱そうだからって手加減しやがって」
「ホント、しょうがないやつらよね。それにしてもさ、あんな小さくて大したこともなさそうな腕前で、蓮華だっていうんだから驚きよね」
耕太と琴子の言葉に正次郎も雅人もクスクス笑った。
倒木から腰をあげ、ジーンズについた土を払い、刀をつかむ。
「男のほうだったら、ちょっとマズかったかもな。でも女のほうはちょろいだろ。面倒だけどさっさと倒して帰ろうぜ」
「そうだな、チビたちと勝也の仇はキッチリ取ってやらなきゃな」
「もちろんだ。俺と耕太で、琴子は正次郎と。勇助は雅人と組んであいつを囲おう」
洸の言葉に一度、手順を確認し合い、麻乃を見た勇助を先頭に、その姿を探して歩きだした。
「確か……ここの……もう少し先だった」
木々のあいだを急ぎ足で進み、生い茂った草木をかきわけて森の奥からでると、周囲を確認してみる。
みんなの気配でざわめいていた森が、今はとても静かだ。
「洸、見つけたぞ!」
耕太が声をひそめて呼びかけてきた。
ずいぶんと離れた場所に、隙だらけで切り株に腰をおろしている麻乃の姿があった。
なにかを待っているようにも見える。
(まさか、俺たちが出てくるのを待ってるのか――?)
「隙だらけだな。やっぱ弱いぜ、あいつ」
雅人が声を殺して笑うと、正次郎も琴子も吹きだした。
改めて見ると、本当にどこにも強さを感じない。
(あんなやつが本当に蓮華なのかよ? あんなんだったら俺のほうがよっぽどマシだぜ)
だんだんと洸の中に苛々が募ってきた。
洗礼で印を受け、戦士になったとしても、あんな程度のやつの下で動かなきゃならないのか?
そう思うと理不尽さを感じてならない。
麻乃に対して洸はきつく視線を向けた。
「行くぞ、時間をかけるのももったいない。さっき話しをしたとおり琴子たちはそっちの茂み、雅人たちはあっちからだ」
「わかった」
ジリジリと間合いを詰め始めた瞬間、麻乃が立ちあがって洸たちのほうを向いた。
「もういいよ。まどろっこしいのは嫌いだ。手前の二組とも出てきなよ。その後ろの木陰にいる二人もね」
まだ遠いのに、まるで見えているかのようにため息まじりでこちらに向かって放たれた言葉に、洸の苛立ちが頂点に達した。
「あいつ……完全に俺たちのこと、舐めてるぞ」
同じように感じたのか、耕太が言った。
琴子たちが刀を抜いたのが目に入る。
(馬鹿なヤツ。俺たちを舐めてかかったことを後悔させてやる)
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