「ぐちゃぐちゃにして?」

高山小石

「ぐちゃぐちゃにして?」

 密室で唇を合わせていると、彼の指がショーツの中に入ってきた。

 荒い息づかいと水音が響く中、触れ合う部分からどんどん熱くなる。

 すがりつくと、やっとベッドに沈めてくれた。

 何度もシてきた仲なので今さら愛を囁き合うこともなく、彼は淡々と、でも情熱的に進めていく。

 私はただただ気持ちが良くて、しがみついて喘ぐことしかできないのだけど、彼は楽しいんだろうか? 私の長所は若くてやわらかいだけなのに。

 別の彼は、「これはどう?」「こっちの方がいい?」と、なんでも聞きたがる。コメントするたびに彼は嬉しそうにしてくれるけれども、私は返事を考えるのに忙しくて、混乱のうちに終わってしまう。

 また別の彼は、「どうして欲しいの?」「言ってくれないとしないよ?」となにかと言わせたがる。望んだ言葉を返せても返せなくても嬉しそうにしてくれるけど、私は戸惑いのうちに終わってしまう。

 最中の会話も楽しめればもっとイイのだろうなとは思う。でもおバカな私は、こたえなくちゃと考えるだけで冷静になってしまうのだ。

 目の前にいる彼はもともと無口だからか、シている間もまったくしゃべらない。

 話さないから、なにをしたいのかわからないはずなのに、優しくうながす動作だけで、毎回違うことを自然と進められている。

 男の人はいったいどこでこういうことを覚えるのだろう?

 感心している間に、すっかり私のカラダは出来上がっていた。

 私はいつからか、彼と他の彼たちのなにが違うのか知りたくて、ひそかに彼を観察しているのに、いつも途中で意識がトんでしまう。

「ね、もっ、ぐちゃぐちゃにして?」

 返事もないまま激しく揺さぶられ、ただただ気持ちが良くて、なにも考えられなくなった。


 白いセカイから帰ってくると、細胞ひとつひとつが活性化したみたいに感じる。

 房中術とはこれかと思ってしまうほどの達成感だ。

 せめてものお返しにマッサージをしよう。

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「ぐちゃぐちゃにして?」 高山小石 @takayama_koishi

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