第28話 パチもん四天王 対 最強ドラゴン、最強大賢者
えっ、作り直した!? それも送り込んだヤツにして貰ったの?
「クックッ、まずはマドリーを始末するのだ、行け!」
何かローブ被った四天王らしき二人が自分指差して戸惑ってんだけど。
「ほら見ろ! お前らが打ち合わせの途中に入って来たせいでこのザマだ!」
魔王激おこなんだけど。
「お前だデスマドリー! っていうか自分の名前でわかるだろうが!」
何そのパクリ名、ってちっこい方がローブ脱いだ。
「むへほほほ……ボクが四天王の一角、デスマドリーなりへへ」
ちょっ! TS前の少年マドリーにそっくりなんだけど。
あ、目が違う、何か死んだ目してるよ。
「そこのキミ……キミだよマドリー、すぐに負けを認めた方がいいなりへへ。何故ってボクはキミを倒す為だけに造り変えられたなりへへ、無駄な労力させるなむへほほ」
何このパチもんマドリー、めっちゃ腹立つんだけど。
「それがし魔王倒して碧殿取り返すなり、だからお断りなり!」
マドリーがいきなりのファイアブレス! って当たる前に弾け飛んだ。
これって無効化!?
「ブレスがダメならこうなり!」
今度は攻撃力カンストのグーパンチ。
「むほっ!?」
パンチ寸止めしたけど何で?
「むへほほほ……魔王様の言われた通りなりへへ」
マドリーの漫画原稿を盾にしてるよ! って、何でパチもんが持ってんの?
「クックック、ザルゥスの所に落ちていたものを復元したのだ。あの悪臭を消すのに難儀したぞククク」
マジか、でも確かにザルゥスから垂れてた汚い汁のシミが残ってる。
「それがしの原稿返すなりー!」
「バカなりへへ……そう言われて返すならとっくに返してるなりへへ」
「むにゅー!」
マドリーが激おこモード寸前なんだけど、それにしても何考えてんの? 激おこさせたらパワー全開で攻撃されるのに。
「クックッ、いいぞ、その調子だ」
魔王が予定通りっぽい事言ってる、これって罠?
「むへほほ……力が漲ってきたなりへへ、もっと怒るなりへへ」
何かパクリの体からオーラ的なものが出てんだけど……まさかこれって漫画やアニメである、相手の怒りを吸い取ってパワーに変えるとかいうやつ?
「もう一度言うけどキミは本当にバカなりへへ……ドラゴン族をまとめてその親分にもなれる力を持ってるのにわざわざ女になるとか、おまけにTS百合とかこんなの描いてるなんて本当にキミはバカのバカなりへへへへへ」
原稿握り潰した! やばっ、あいつの狙い通りマドリーが激おこモードに!……ならない?
「むへ……むへほ? 魔王様の話ではこれで激おこになるはずなりへへ?」
「それがしドラゴンの親分なんか興味ないなり。TSするのが夢で、それを叶えてくれた翼殿の望みを叶えるのが今の夢なり」
「ちょっ、何で怒らないへほ!? む、む、むへほー! じゃあ原稿をこうしてやるなり! へほっ、へほっ、へほほー!」
今度は原稿踏みまくってんだけど。
「別にいいなりよ、また描けばいいだけなり」
「むっへほー!! もういいなりへへ、お前から吸い取った怒りでパワーアップしたボクの力を食らうなりへへー!」
パチもんがマドリーの下顎にアッパーした!
「むほっ!……む……ほ? ま、ま……ま」
ま?
「負けを認めたなりへへ?」
「漫画のアイデアが一個消えたなりよ、むほー」
「なりへボォォ!!」
マドリーが涼しい顔でアッパー返し。
食らったパチもんが天井突き破ったよ! ってそのまま星になってんだけど。
「凄いよマドリー!」
「怒るより邪魔だから殴ったけど、凄かったなり?」
激おこマドリー並みの威力に見えたけど、平常心でその力出せるようになったとか?
って、魔王も仰天して天井の穴ポカーンと見てんだけど。
「……はっ! いかん、ここは切り替え、そう切り替えだ……クッ、クックック、おい貴様ら、やったやったバンザーイ! と浮かれてる場合か?」
そんなのしてないよ。
「さて、9話を過ぎたアニメみたいにクライマックスへと入ろうか、ククク」
何その例え、っていうかコイツ誰かに似てんだよな。
「ノエルを倒す為に作り替えたノエルキラーよ、行くがいい!」
って事は被ったローブの下から出てくるのは……って、やっぱTS前の爺さんノエルだよ。
「ンな事より、最初から吾輩を出せば良かったんじゃい! デスマドリーとかあんなガキィ、最初からいらんのじゃい!」
魔王がちょっと引いてウケるんだけど、それにしてもこのパチもんガラ悪っ。
目付きもノエルと違って、使っちゃいけない薬物常習者な感じ。
とはいえパクリ丸出しなネーミングからしてきっとコイツも……。
「ノエル、あいつ多分魔法を吸い取ってパワーに変えるタイプだよ」
「わかっておる、時にノエルぷっ! キラーとやら」
「なんじゃい! ンな事より、今笑っとらんかったか?」
「そんな事より、そなたTS百合は知っておるか?」
「ああ? 知っとるで。あれじゃろが、女の体になった野郎同士がキャッキャッウフフとかいう地獄絵図の事じゃろが、って何言わすんじゃコラ」
「なるほどの、これで心置きなくそなたを倒せるわい。ほれ食らうがいいわ!」
ちょっノエル、何魔法ぶっ放してんの!?
「やりおったわい、ボケカスが!」
パチもんが魔法を体の正面で吸い込んだよ。
「コラええのう、もっと寄こすんじゃボケカス」
「腹ぺこチャンじゃのう、ほれほれ、っと」
魔法吸い込む度ムキムキになって黒スーツはち切れそうだよ、ってそんなに魔法連発したらパチもん有利は勿論、ノエルの腰が……。
「あだっ!? あだだだだっ!」
ほらやっぱり痛めたよ。
「つ、翼よ、腰を揉んでくれんか」
はいはい……って、ん? 何か腰回りのお肉、すげえ揉み心地いいんだけど。
「おっ、おほっ! おほほっ、良い! 良いぞ翼!」
エロい声出して悶えないで欲しいんだけど。
「むほー! ノエル何やってるなりー!」
何でマドリー怒ってんの。
「パワー満タンじゃからもう魔法いらんぞボケカス。それにしてもおんどれ、魔法王国史上最高の魔力持ちのクセに何で女なんぞになりくさったんじゃい、男のままなら歴史に残る最高の王になれたろうに」
「おほぉ、そこじゃ、そこ強くじゃ翼よ」
「コラッ話きけや!……まあええわ、おんどれ物理防御無いに等しいんじゃろ、パワー満タンになったこの拳で木っ端微塵にしたるわ!」
ヤバいんだけど、腰揉まれてる場合じゃないんだけど。
「おほっ、そなたまだ気付いておらぬか、おほっ、その体がおほっ、TS化しておるのに」
「ああ?……ん? んんー!? なっ、何じゃコリャー! 吾輩の体が! 女なんぞになってるじゃねーか!」
「ファッハッハ、どうじゃ、TS女体化された気分は?」
「おっ、おんどれ! どうやってこんな事を……ゆ、許さねえ……許さねえぞボケ……カス」
パチもんが涙目になったよ、って何これ?
「幻影魔法をかけたのじゃ、翼」
「えっ? でもそれって四天王クラスには効かないんじゃ……」
「耐魔法力が強い相手には弾かれる、じゃが奴はどうじゃ」
「そっか、弾くどころか魔法吸い取ってるもんね」
「あっ」
あ? って、魔王がうっかり誤魔化すみたいに顎を指でポリポリしてるよ
「そんな事より見てみよ、あやつの顔! ファッハッハッハ!」
涙と鼻水垂らしての怒り顔は確かに面白いけど、TS前の自分がモデルだよ。よくそんなに笑えるね。
「ゆ、許さねえ! このボケカス、魔法食らって吾輩はパワーアップしてんじゃぞ。この拳で粉々にしてやる、コラァァ!」
ひぃっ、ヤバッ!……ってあれ? 明後日の方を攻撃してんだけど。
「幻影魔法にかかった時点で勝負は決しておったのじゃ。レベル61魔法、がんじがらめのマジカルロープ」
「コラァ、うっ!?」
ノエルが怖そうなオーラ漂わせてパチもんに歩いてく。
「歴史に残る最高の王になる? 翼にTSして貰い取り戻したこの姿、これこそが儂に取って最高なのじゃ。さてそなた、TS百合が最低最悪など好き放題言ってくれたのう」
「こ、小細工魔法で勝っていい気になるなよボケカス! 魔王が吾輩の代わりにおんどれらをズタボロの細切れに――」
「そんな事より」
ヒィッ、こんな怖い目のノエル初めてなんだけど!
「儂は大切な仲間の為にサクっと魔王を倒さんといかんのじゃ。レベル52魔法、筋力増強スーパーダイレクトアタック!」
ノエルの右腕がブっとくなったよ!
「わかったかの、そなたごとき魔法を使わんでもこうして簡単に」
「こ、このボケカ――」
「倒せたんじゃー!」
「スタゴラッッ!!」
ド迫力のアッパーでパチもん吹っ飛んだ! って、マチもんマドリー作った天井の穴に消えてったよ。
「あだっ! 腕がっ、あだだだだ!」
「ノエル! 大丈夫?」
「驚いたなり、こんな攻撃出来るの何で隠してたなり?」
「い、一瞬だけ筋力増強するスキルじゃからの、しかも反動で数日腕が使い物にならん、じゃがあやつだけは思い切りブン殴りたかったんじゃ」
「むほ、これで残るは魔王だけなりね」
そう、後は魔王だけ――ってまたポカーンとしてんだけど。
「……二人共やられたではないか。何でだ、絶対勝てるはずだったのに……これではまたあいつに……」
何言ってんの魔王? っていうか
「TSガンを、碧を返して欲しいんだけど!」
魔王がロボみたいな動きでこっち見た。
「こいつの事か」
右手に握られたTSガン。
俺以外持てるはず無いのにどう考えてもおかしい、って碧の様子もおかしいんだけど。
何かガッコ行く前のボーっとした顔してんだけど。
【29話予告】
やたら怒るくせに実は低血圧だった碧、そんな彼女がガチな本音を曝け出し翼は大混乱、的なお話。
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