第23話 仲間になった大賢者のお爺さんをTSした結果

「そんな事より、儂を仲間にしたのならやる事があるじゃろう」

「わかってるよ」


 TSガンを向けるとノエルが感極まった顔になった。


「遂に……遂に儂は本当の姿に戻れるんじゃのう……」


 口癖の「そんな事より」を忘れてんだけど。

 まあ生まれてすぐ性転換手術されたから当然といえば当然だよね。


「じゃあいくよー、TSガン……ほら、碧」

『え? あ、うん。ご、GO~』


 青と赤がねじり合ったTSビームが両腕広げて目を閉じるノエルに向かって行く。

 相変わらずヘアカット屋さんでぐるぐる回ってるアレみたいだな。

 と思いながら目で追ってたビームが厳粛な空気漂うノエルに命中した。


「ふおっ!? ふおおーーー!!」


 厳粛な空気から一転、TSの通過儀礼である全身のツボを押されたようなムズじわ感にノエルが悶絶、その場を転げまわる。


「むほほほほー! これは使えるなり!」


 マドリーが愉快で堪らないといった声を上げつつ転がるノエルをスケッチ。


『ねえねえ翼~、ノエルさんどんな女の人になるんだろ~?』

「碧殿、期待しちゃダメなりよ」


 マドリーが半透明の紙をこちらに見せた。 


「ノエルはお爺さんなり、だからこんなお婆さんになるかもなり、むほほ」


 そこには性悪な目をした醜い老婆が描かれていた。


『ぷぷぷ~、マドリーちゃんヒドい~!』


 言いながら笑いを堪える碧。

 いやいや、TSガンで撃たれたヤツはみんな美女化してるから大丈夫! のはず。

 それにしてもマドリーってノエルにはホント当たり強いよね、これから一緒に戦うから仲良くして欲しいんだけど。


『あっ、TS終わったみたいよ~』


 どれどれ――って、え!?


『ちょ、ちょっと翼~! ノエルがお婆さんになってる~!』

「むほー! むほほほほ! それがしっ、冗談で言ったのにっ、ホントにそうなったなりっ、むほほほ!」


 笑ってる場合じゃないんだけど!


「そんな事より、どうじゃTSした儂の姿は?」


 気付いてないの!? 腰曲がったお婆さんになってんだけど!


「……何ての、ファッハッハッハ」


 あっ、すげえ美人に変わった!


「ちょっと驚かせてやろうと思ってな、そなたらに幻影魔法をかけたのじゃ」


 心臓に悪いそんなサプライズ、マジいらないんだけど!


「頼むから俺達にその魔法使うの止めて」

「ファッハッハ、わかったわかった、二度とそなたらには使わん」

「約束だからね」


 そう言いつつ、改めてTSしたノエルを見る。

 しかし何というか……ゴクリ……TSしてここまで変わるの初めて見た。

 お爺さんの時は怖過ぎな鋭い目も、女体化した顔だとすっげえ凛々しくてカッコいい。

 威圧感滲み出る背の高い体も、女体化すると海外トップモデルに見える。

 そして魔法使いお爺さん定番のオールバックにロングウェーブというムサい髪型も、女体化した今はすげえセクシーに見えちゃう。

 何より凄いのが胸、俺のDカップが貧乳に見える大きさ。

 恐らくF……いや、Gカップはあるかもしれない。


『ねえねえ翼~! 何やらしい目でノエル見てるのよ~!』

「そうなりそうなり!」

「翼とやら……いや、翼」


 口調が爺さんの時と同じで気付かなかったけど、ちょっとハスキーなセクシーボイスが俺好みなんだけど。

 って、こっち来た。


「TSしてくれた礼を言うぞ」

「い、いいよ別に……仲間になって欲しい言ったのこっちだし、TSするのが俺の役割だし」

「本来の姿に戻れた儂の喜び、そなたが思う遥か上じゃぞ」


 ち、近い! 顔近いんだけど!


「そんな事より……」


 え?


「ファッハッハッハ! 女体じゃ女体じゃ! 儂はとうとう女体化したー! これが本当の儂の姿! ファッハー、これは堪らんのう!」


 自分の胸に尻、そして股間を触りまくってハァハァ言ってんだけど、海外トップモデルな痴女になったんだけど、っていうかTS直後の俺やマドリーとまったく同じ事してんだけど。


「ハァ、ハァ……そ、そなたの目的の為に戦い……ハァ、いつまでも仲間となる事を……ハァ、約束しようぞ」


 それちょっと恍惚入ってる顔で言って欲しくないセリフだよ。

 って、 爺さんの時はハッカ臭かった息がシトラスみたいな香りになってる!

 やっぱTSすげえ。


「翼殿ー、それがしの漫画奪うようなノエルの約束信じちゃいけないなりよー!」

「ハァ……何じゃマドリーとやら、いやマドリー、そなた嫉妬しておるのか? ハァ」

「む、むほっ! そんな事ないなり! それがしの方が先に翼殿の仲間になったなり! お主より翼殿と過ごした時間長いなり!」

「そんな事より、いかに翼の力になれるかが大事じゃろう。儂といえばありとあらゆる魔法をマスターしておるがの」

「そ、それがしだって怒るとむちゃくちゃ強くなる!……みたいなりよ」

「ファッハッハッ、怒らぬと強くならぬとはポンコツじゃのう。それで翼と碧の役に立てるか甚だ疑問じゃな」

「むほー! もう我慢出来ないなりー!」

「ちょっ、待ってよ!」


 それに聞く耳持たないマドリーが両腕を車輪みたいに回してノエルに突進!


「そんな事より、レベル99魔法、ダイレクトアタック無効の刻」


 手の平から出た魔方陣が両腕を回すマドリーの突撃を止めた。


「むほー! むほー!」

「うむう? 攻撃力……939!」


 何で攻撃力分かんの? って、魔方陣にマドリーの攻撃値出てんだけど。


「こんな強力なドラゴンがおるとは少々驚いたのう、しかし直接攻撃を防御するこの魔法の前では無力じゃの」


 攻撃値の下にノエルの防御値も出てるよ、何この便利機能。

 って950か、かなりギリじゃん。

 まあ900超える攻撃力持ってるの魔王とマドリーだけだもんな。


「やれやれ、もうそろそろ無駄と気付いて諦めて欲し――あだっ!? あだだっ!」


 お馴染みのぎっくり腰。

 って、防御値が一瞬920位に下がったけど。


「あだがっ!」


 魔方陣すり抜けてマドリーの攻撃が一発ヒットしたよ。

 とはいえ大賢者だし、一瞬下がったとはいえあの防御値だから大したダメージじゃないよな。

 って、倒れてピクリとも動かないんだけど?


『ちょっ、ノエルさんHP6しか無いわよ~! ほら翼~、早くこれ飲ませて~!』


 オープンステータス見た碧がハイポーション投げてきた。


「いやいや危ない所じゃった、すまぬのう翼」

「いやいやじゃないんだけど、何でそうなったの?」

「ファッハッハ……実は儂の物理防御、かなり低くてのう」


 え? と思いつつ碧が出してるオープンステータスに目をやった。


 ノエル  LV99

 ジョブ:大賢者

 HP  156/474

 MP 959/999    次のLVまで -------

 力      73   攻撃力   73

 素早さ  755  防御力 -100

 体力 237  魔法防御力 985

知力 994 百合魅力度  968

 魔力   999   

         

 だから何で防御力マイナスになってんの?

 またマドリーと同じ現象じゃん、マジ意味わかんない。

 やっぱあいつの仕業? むっちゃ腹立つんだけど。

 しかしヤバいでしょコレ、魔王城のモンスターどころかザコモンスターにも群れで襲われたらチーンなんだけど。


「なあに、要は物理攻撃を受けねば良いだけの話じゃ。ほれ、レベル99魔法、ダイレクトアタック無効の刻」


 さっきの魔法陣を手の平に発動させる。


「どんな威力の直接攻撃も5秒間防いでくれる、その間に儂の攻撃魔法で相手を倒せばいいだけじゃ、ファッハッハッ!」

「その間にギックリ腰来たら?」


 ピタッと笑いが止まったよ。


「なあに、たまに来る程度じゃから大丈夫――あだっ!? あだだだっ!」


 やっぱダメな予感マシマシなんだけど。


「むほほほ、本当に魔法以外ポンコツなり」

「何じゃと、そなたこそ直接攻撃以外ポンコツではないか」

「むほっ! お主よりマシなり!」

「そんな事より、儂の方がマシじゃ」


 この仲の悪さ、どうにかならないかな。

 今から始めるレベル上げのバトルで仲良くなって欲しいんだけど。


【24話予告】

 TSなら、キモオタ少年と目つきの悪いジジィのケンカも美少女と美女のケンカに早変わり、さあ次はあなたの番です!

 二人の仲をどうにかするため、エロい腰を揺らしながら翼は考えました。

 よし、アキバをモデルにしたトコ行って勝負させよう、そこで友情が芽生えるは(ry。

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