第21話 魔王軍四天王を2回TSした結果

「オホヒャ!! な、何をしま……んがッ、あべッ! あべェェ!」


 口に流れ込んだ激甘コーヒーにメロウが悶絶。

 当然身に着けてる何かに変化させられたアリアさんもそうなるはず。


「甘っ! 甘いーー!」


 メロウの被るシルクハットがアリアさんに変わったよ! って裸!?


「アリア殿!」


 すかさずスーツの上着を脱いでアリアさんに被せる紳士なノエル。


「レベル5魔法、ウォーターアタック弱モード」

「んっ!? ああっ!」


 魔法で水を飲ませるというばっちりケア、さすが無駄に歳を取ってない。


「んごほォ! わ、わたくしにもォォ、水を! 水をォ!」


 メロウが砂漠の放浪者みたいに手を伸ばしてる、それもロリっ娘がしてはいけない顔で。

 そんなメロウをガン無視したノエルがアリアさんを両手に抱えながらこちらに来た。


「ふむ、驚かせると変化魔法が解ける、やるではないか翼とやら」

「えっへっへ」

「そんな事より、あれを見るのじゃ」


 モジャ髭アゴがしゃくる先にはシルクハットが無くなったメロウの頭。


「あ、ティアラ」


 ノエルが作ったTS魔法を封じたティアラはやっぱりメロウが盗んでたのか。


「さて、あやつをどうするかのう」


 取りあえず水水騒いでるメロウにウォーターアタック弱モードを食らわせるようノエルに言った。


「はァー! はァー! な、何てバカ甘コーヒーなのォ! うぐえェ、何てモン飲ませんじゃあァ!」


 いやそれモブ王にオホホ言いながら飲ませてたよね。


「ねえメロウ」

「なっ、何ですのォ、このおとこオンナァ!」

「もう降参してよ」

「……んッ! くゥゥ!」


 ゾンビ使えないならメロウは只の巨乳ロリっ娘。

 俺の往復ビンタで倒せるけど、さすがにそれは。


「……オホッ、オホホホォ! おバカさんねェ、わたくしにはまだ切り札がありますのよォ!」


 え! まだあるの!?


「ほらァ! これが見えませんのォォ?」


 マントから何か出した! って日記?


「うむう? それは……」

「気付きましたァ? 老いぼれェ! あなたがしこしこ書き溜めてた百合小説ですわァ!」

「どうやってそれを……」

「こういうのはベッドの隙間に隠すと決まっておりますわァ!」


 紙媒体のリスクはこういうトコなんだよな、って何でメロウが男子あるある知ってんの?


「わたくしを見逃しなさいィ、そうすればこの百合小説を全国民に晒してから燃やすのを勘弁してやりますわァ」


 何そのやり方、魔王軍四天王がガッコの嫌な奴レベルに暴落してんだけど。


「断るなりよノエル! 小説はまた書けばいいなり、こんな脅しに負けちゃダメなり!」


 マドリーが良い事言った。

 俺も何回かのフリーズ乗り越えてこのゲーム作ったからわかるよ。


「んまッいいのかしらァ、ドラゴンのおチビちゃァん? これ、あなたが描いたTS百合漫画のデータじゃありませんことォ?」

「むひゃ! な、何でお主が持ってるなり!?」

「儂の百合小説と一緒に隠しておったのが裏目に出たのう」

「ノエルー! お主バカなり! おバカさんなりー!」

「オホッ、バカな小競り合いは後にしてくれませんことォ? さあ早くわたくしを見逃すと約束しなさいィ! オホッ、オホホホホホォ!」


 このやり方、意外にも効果的なんだけど。


「そんな事より」

「ホ?」

「小説も漫画も燃やすが良いわ、メロウとやら」

「むひゃ! ノエル、何言ってるなりー!」

「うむう? また書き直せばいいと言ったのはそなたであろう、マドリーとやら」

「む、むほ…………そうなり、それがしそう言ったなりね……や、破って燃やして……いいなりよ」


 マドリーが涙目になってんだけど!


「くッ……くきィィィ! こうなったらもういいですわァ! ノエルを苦しめるという魔王様の命令を最後まで遂行してやりますわァァ!」


 やばっ、マジでやる気! なら俺もやるしかない!


「TSガン! ほら碧」

『オッケー、GO~!』


 おっ、珍しく碧がレスポンスいいんだけど。


「オホッ!? オトコおんなァ、あなた何をやってェ――」


 赤と青がねじり合ったTSビームがメロウに命中。


「オホハァッ!!」


 メロウの手からノエルのノートとマドリーの漫画原稿が落ちた。


「うッ……はゥゥ……」


 TS完了、予想はしてたがやはり美少年。

 ん? 美少年?


『ふぬ~……じゅる……な、何あのボブカットな神ショタ~』


 やっぱ食いついてんだけど、碧のショタ魂に火が付いてんだけど。


「んッ、うゥ……ん? オホひゃぁ!? わ、わたくしが男ぉぉ! 男になっておりますわァァ!」


 両手でボブカットをわしゃわしゃさせてコンフュージョン。


『ね、ねえねえ翼~、あの神ショタ……じゃなくメロウだっけ? を仲間にしないの~?』

「あいつの事ゴミ箱の底にくっ付いた黒カビポテチとか言ってたよね、っていうか俺のパーティ、TS百合しか枠無いんだけど」

「はっ! そ、そうだったわ、あいつは腐れ畜生~! コンニャロ~、見た目ごときであたしは騙されないんだからね~!」


 コロッと騙されそうになってたよね。


「男! わたくしが男ォォ! オホヒャァァ! ま、魔王様にこんな姿見せられないですわァァ……ハッ!?」


 急に頭のティアラに気付いたけどまさか。


「こ、これがありましたわァァ! 変化魔法を封じたこのティアラを使えば元の姿にィィ!」


 マジか、っていうか別にいいよ、元の姿に戻っても。

 勝負は終わってるし、神ショタから巨乳ロリっ娘に戻るだけだし。


『何元に戻ろうとしてるのよ~! また女の姿で責任回避人生送ろうとしてもそうはいかないんだから~!』


 えっ、TSガンが勝手に動いて――ちょ、碧!


『食らいなさい、TSガン、GO~!』


 碧が勝手にTSビーム撃ったんだけど!


「変化魔法ォ! わたくしを元の姿にオホハァッ!?」


 命中しちゃった。

 ヤバいよコレ、TSビーム二回命中はガチでヤバいんだけど。


「ううッ……オホッ、はァ!……」


 メロウが床で悶絶してる、全身のツボを押された様なあの感覚を立て続けに二度はさすがに可哀想。


「翼とやら」

「何?」

「そなた言っておったのう、TSビームを二度受けると記憶が消えると」

「う、うん」

「それはTSしていた時だけの記憶が消えるという事かの?」

「ううん、全部消えちゃう」

「むひゃっ、それは酷いなり!」

『お、思わずカッとなって撃っちゃったけど~、ちょっとやり過ぎたかも~……』


 四天王の一人だから記憶を無くした方がいいかもしれない、っていうかメロウが神ショタから巨乳ロリっ娘に戻ったんだけど。


「うっ……うーん……あり? ありり?」


 ありり、ってこの喋り方まさか。


「あなた方は何者なのら、ここはどこなのらー?」

「つ、翼殿、メロウの様子が変なりよ?」

「翼殿、心当たりあるかの?」

「え? わ、わかんないよ」


 これは半分ホント、何で記憶が消えたらメロウ本来の喋りに戻ったのか、マジ訳わかんないんだけど。


『うわ~、メロウって本当に――』


 ん? 碧のヤツ、今何て言った?


「わ、わたちは誰なのら? 怖いのら、怖いのらー」


 メロウが頭を抱えてうずくまる。

 この様子だと四天王だった記憶も消えて、本来のお子様性格に戻ったみたいだ。


『翼~、あのメロウどうするのよ~?』


 神ショタ騒いでた碧がどうでもいい的な声で尋ねてきた。


『まさか仲間にする気じゃないでしょ~ね~』

「しないよ、お子様キャラはマドリーと被るし、何より俺はTS百合しか仲間にしない」

『じゃあどうするのよ~、ってあら?』


 アリアさんがメロウのトコ行った。

 何だろ、慰めるのかな?


「メロウちゃん」

「な、なんなのら? わたちはメロウっていうのら?」

「そうよ、ところでわたしの事、覚えてる?」

「し、知らないのら」

「そう……じゃあ教えてあげるわ」


 こっちに背中向けて喋るアリアさんの声がちょっと怖いんだけど。


「あなたはね、変化魔法でわたしを帽子にしたの」

「のら?!」

「その上わたしに化けて好き放題やってたのよ」

「のらー!?」

「いくら記憶を無くしたとはいえこの事実は変わらないわ。どうするの、メロウちゃん? 責任は重大よ」

「せっ、責任!? い、嫌なのら、責任取るのは嫌なのらー」


 何か傾界の魔女の性格が残ってんだけど。


「あっ! ああーっ!?」


 お、モブ王がお目覚め。

 メロウの洗脳は解けてるかな。


「ア、アリアしゃまー! 元のお姿に戻られましたか! どの姿も美しく有られますが、やはりこの姿が一番でありましゅー!」


 解けて無いの?!  ってアリアさんの足首に頬ずりしてんだけど、これはドン引きされるよ。


「そうです、わたしが本当のアリアです、モブリアーノ様」

「はぇ? さ、様?」

「長い夢を見ているようでした、でもそのお陰で気付いた事がありました」


 アリアさんどうしたの? モブ王も口開けてポカンとしてるんだけど。


「実はわたし、モブリアーノ様の事を誤解していました。相手に苦痛を与えるのが大好きな頭の堅い殿方、そう思っていました。でも……」


 でも?


「まさか、本当にまさかです! 苦痛を受ける事に快楽を感じる方だったなんて! 苦痛を受けてこんなに情けない態度を取る方なんて! わたし、わたしっ、そういう人を見ると堪らなく苦痛を与えたくなるのです!」


 ええっ? アリアさんがまさかのドSカミングアウト!


「まさに運命の殿方です、モブリアーノ様!」

「私が運命の人! ありがたき幸せでごじゃいます、アリアしゃまー!」


 何か凄い事になってんだけど――って、ノエルが鼻水片っぽの穴から垂らして固まってるー。


「激甘コーヒーをどうか、どうかお恵みをー!」

「あれはいけません、体に悪過ぎです。これからはたっぷりお酢を入れたドリンクをお出しします」

「そっ、そんなー! でもアリア様のお恵みなら何でも絶頂でしゅー!」


 結局何でも絶頂でしゅか。


「うん、お酢は体にいいのよ~、アリアさんわかってるじゃない~」


 碧がアリアさんとお酢友になりたそうに見ている。


「そういう訳です、メロウちゃん」

「のら!?」


 急に顔を向けられたメロウが子ウサギみたいに飛び上がった。


「わたしがモブリアーノ様を絶頂……こほん、心地よくさせている間、あなたがモブリアーノ様に変化して仕事をして貰います」

「し、しつむ、って何なのら?」

「王の仕事です」

「のらーー!? そんな責任たぷたぷなの、あたちには無理なのらー!」

「大丈夫、わたしが目を通した書類にサインをするだけですよ」


 何か凄い展開になってんだけど、ってノエルが彫像みたく固まったままなんだけど。


『ね、ねえノエル~、あの、その、ほら~……アリアさんとはTS容認してるって絆があるじゃない~、だから落ち込むのはまだ早いわよ~、ね?』


 碧、もう忘れちゃったの。TS容認派です、ってノエルに打ち明けたのはアリアさんに変化したメロウだよ。


【22話予告】

 失恋したうえ初恋相手がパチもんアリア、というウィンナかじったら熱い肉汁出てコーラ飲んでむせた的なダメージにジジィ再起不能か。

 次回、ノエル篇完結、な話。


 

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