第19話 ロリで巨乳な魔王軍四天王登場
「あヴぇおェ!」
うわっ、横向いて激甘コーヒー吐き出した。
しかもモブ王の顔面直撃だよ。
「うげェ! これスゲェあべェ! うえェー!」
「うむう? どうされた、アリア殿」
「い、いえェ、わたくしったらうっかり砂糖を入れ過ぎてェ、オホォ」
作り笑い浮かべてもダメ、もう手遅れ、っていうか口調がアリアさんに戻ってないよ。
「そなた、何者じゃ?」
「な、何を言ってますのォ? ノエル様ァ」
もう諦めて。
「そんなことより、アリア殿はどこじゃ!」
「アリア殿はわたくし、じゃなかった、わたしですわァ」
ボロ出まくりなのに何で諦めないの!? もういいよ、俺が言うよ。
「ノエル、こいつの正体は」
ビシッとパチもんアリアさんに指先を向ける。
「あの悪名高い、傾界の魔女だよ!」
決まった! 美少女の俺がやってるから絶対決まってるよコレ!
ってあれ? ノエルの反応が塩抜きポテトみたいに味気無いんだけど。
「うむう? 軽快な魔女、とな?」
何そのスニーカー履いてそうな魔女。
「軽快な魔女じゃなく傾界の魔女、世界を傾ける魔女って意味だよ」
三日かけて決めたネーミングを説明するのって恥ずかしい!
「傾界の……魔女? うむう」
「ほら、百年前に世界中を戦乱の渦に巻き込もうとした伝説の魔女だよ。最後はスパロー帝国の軍勢に倒されたっていう……え? ホント知らないの?」
「そんな事より、思い出したわい」
良かった! 知らなかったら大変な事になってたよ。
「帝国に≪傾界の百合≫という雑誌があったはずじゃ」
ダメだ、この爺さん。
「マドリーは? 知ってるよね?」
腕を俺の胸の谷間に挟まれポーっとしていたマドリーが慌ててこっちを見た。
「む、むほ?……それがしもそういう名前の魔女は知らないなり」
ちょっ、マドリーも知らないとかって、まさか傾界の魔女ってこの世界に存在してないの?
『ねえねえ翼~』
でもあの性格と口調は間違いなく傾界の魔女。
マジ訳わかんない。
『ねえったら~!』
「何だよ、碧」
『アリアさんに成りすましてるの、結界の魔女じゃないんでしょ~』
「結界の魔女じゃなくて傾界の魔女」
『どうでもいいわよ、そんなの~』
三日かけて決めたネーミングをダブルワードで否定された。
『あたし、わかったのよ~』
「何が?」
『偽アリアさんの正体よ~』
アゴに手を当て目がキラリ、打ち切りかと思ってた名探偵アオイの第三話が始まったんだけど。
『コラそこの偽者~』
今度は名探偵アオイがビシッと傾界の魔女を指差したよ。
『アンタ、魔王の四天王のひとりでしょ~が!』
はあ!? 何そのトンデモ推理。
残る四天王の内二人は魔王城に配置してあるし、もう一人もこことは全然違うイベントに配置してるし。
パチもんアリアさんが傾界の魔女じゃないとしてもそれは無い、まず無いんだけど。
という訳で名探偵アオイの推理は大外れで第三話終了、っていうかもう打ち切りでいいんだけど。
「オホッ……オホホホホッ! よく見破りましたわねェ」
わーお!?
「そこの老いぼれノエルにも気づかれなかったのにィ、どうやって見破りましたのォ? 道具ゥ」
『道具じゃないわ~! アンタなんかアリアさんの偽者じゃない~! この偽者偽者~!』
「オホッ、よく吼える道具ねェ、でもまあバレたのなら正体を見せてあげるわァ。わたくしこそ魔王様四天王の一角、スペスペスペシャルな存在……」
マジで四天王なの! ってかどいつ?
「メロウ・ド・リビングデッド様よォ」
えっメロウ!? ちょっ、マジ? って変身したー!
ディフォルメ骸骨をモチーフにした巨大シルクハット、これまたディフォルメした骸骨アクセサリーをジャラジャラ垂らした赤マント、その下に見えるロリ裸体には絡みつくよう魔術紋章がびっちり。
マジでメロウだ、とはいえ俺の作ったメロウは無邪気な性格で「なのらー」とかお子様喋り全開なはず。
「もう、何で正体を知ってしまったのかしらァ、スペスペスペシャル面倒臭いですわねェ、んもォ」
なんで喋りと性格は傾界の魔女になってんの?
またアイツ? 俺と碧を送り込んだアイツの仕業? さすがにやり過ぎでしょコレ!
「うん? だっ、誰だお前は!? アリア様はどこへー? アリア様! アリアしゃまー!」
恍惚顔でフニャっとしてたモブ王がフルブーストで大慌て。
まあ美人お姉さまが急に個性溢れるロリっ娘に変身すればそうなるよね。
「落ち着くのですわモブリアーノォ、わたくしはアリア、この姿がアリア、おわかりィ?」
「はっ!? ア、アリア様なのですか! 何故、何故そのようなおしゅがたに!」
「何故ですってェ? それはァ、あなたのせいよォモブリアーノォ、おわかりィ?」
「はっ!……ははぁー! そうでございました、私のせいでございましたー! 私のせいでそのお姿になられたのでしゅー!」
「よろしくてよ、モブリアーノォ。何でもあなたのせい、ともかくあなたのせい、ぜェェんぶあなたのせい、オホッ、オホホホホォ!」
もうムチャクチャ。
何このメロウ、傾界の魔女より性格悪いんだけど。
「ふんぬ~」
碧がレッドカード寸前の顔してる。
「こら~、骸骨女~! 何ふざけたコト言ってるのよ~!」
「オホホッ、わたくしの名はメロウ、ですわァ道具ゥ」
「あたし道具じゃないわ~!」
「オホッ、まあ道具じゃないといえばそうですわねェ、本当の道具はもっとスペシャルなものですしィ。って、あらまァ、わたくしの言ってる意味が全然わかってない顔ですわねェ。では教えてあげますわァ、いいですかァァ」
メロウが自分の足首に頬ずりしているモブ王を指差したよ。
「これこそが道具ですわァ! 責任をぜェェェんぶ押し付ける為だけに存在するゥ、スペスペスペシャルに便利な道具ゥ!」
わーおっ、最悪過ぎ! って責任を全部押し付ける?
あ、今わかった、王室間でモブ王が「私が決めた事には何人たりと逆ってはいけない、わかるかね?」ってアリアさんに化けたメロウに確認してたのこういう訳か。
モブ王にそう言わせとけば自分は責任を負わなくて済む、っていう話になるもんね。
「ふんぬ~! 男の人に美味しくて体に良い食事出すのが女の幸せなのに、そんな糖尿病まっしぐらな物飲ませるなんて~! アンタ心底救いようのない腐れ外道よ! ゴミ箱の底に張り付いてた黒カビポテチより腐ってる外道よ~! アンタみたいな外道、同じ女として許せない~!」
「オホホッ、道具の分際で女を名乗らないでくださるゥ? 女というのはわたくしのようにスペスペスペシャルな存在をいうのよォ」
自分で巨乳揉み始めたんだけど。
やべっ、人並みにロリ好きな俺でもドキッとした。
俺でこうなんだからロリ愛好家は目にハート浮かべて鼻血噴射かもしれない。
「ロリなお体にセクシィ巨乳、これこそがスペスペスペシャルな女よォ、男はバカな生き物だからこの魅力にコロォォっとひっくり返ってわたくしが好き放題やっても責任をぜェェんぶ取ってくれるスペスペスペシャルに便利な道具になるのォ。そうよねェ、モヴリアーノォ?」
「ははーっ! これからもバカな男の私が全部責任を取る道具になりましゅ、アリアしゃまー!」
「よろしくってよモブリアーノォ、オホッ、オホホ!」
ガチでヒド過ぎるんだけど、傾界の魔女もかなりな性格にしたけど全面降伏って感じ。
「ところでそこのオトコおんなァ」
それって俺のこと?
「あなたTSとかいう最悪な方法でオトコおんなになったのよねェ?」
最悪なヤツに最悪言われたよ。
「はぁ」
「オホッ、オホホホッ! 何とも奇遇ですわねェ、魔王様から受けた命令でその老いぼれをいたぶってる時に、あなたみたいのが来るなんてェ。これは魔王様にスペスペスペシャルなお土産が出来ましたわァ!」
さっきからスペスペうるさいんだけど、って魔王の命令で来た?
「魔王が何でノエルにそんな事するの?」
「オホッ、あなたはお土産になってくれましたからねェ、特別に教えてあげるわァ。つまりィ、魔王様はTSが大嫌いィ。そしてェ、世界で3人しかいない大賢者の老いぼれノエルはTSが大好きィ。おわかりィ?」
「成る程の、世界的に影響力のある儂がTSを容認しているのが気に入らない、そういう事じゃろう」
メロウをじーっと睨んでたノエルがやっと喋ったよ。
「あらまァ正解ィ、まだ耄碌してないとは残念ですわァ」
「そんな事よりっ、アリア殿はどこじゃ!」
「オホホッ、そんな事訊いていいのかしらァ? 答えを知ったら苦む事になるわよォ?」
「どうやら儂の魔法をプレゼントされたい様じゃのう」
「あらまァ、じゃあ答えてあげるわァ。んもォ、老いぼれが訊いたから悪いんですのよォ、責任はぜェェんぶ老いぼれが取ってくださいませェ」
両手を大きく広げたメロウがその場でくるりと一回転。
「アリアはわたくしが身に着けてる何かに変化させてますわァ、そう老いぼれェ、あなたの所から盗んだ変化魔法でねェ。あらまァ言っちゃいましたわァ、んもォ、思いっきり苦しむ顔を見せてくださいましィ、オホッ、オホホホォ!」
「メロウとやら、そなたいつからアリア殿に化けておったのじゃ!」
「またまたそんな事訊いちゃってェ、スペスペスペシャルに苦しみますわよォ、でも苦しませたいから教えて差し上げますわァ。そ・れ・はァ、TSはもっと肯定されるべきィィ、と言った日から! ですわァァ」
「うむう……」
確かアリアさんがTS肯定派なのに浮かれてベッドで転がり過ぎたら腰痛めたとか言ってたよね。
それってアリアさんがここ来て間もない頃なんじゃないの?
「アリアに気があるのは魔王様から知らされてましたわァ、そして大のTS肯定派なのもォ。だからそう言ってやったのですわァ、スペスペスペシャルに気持ち悪かったですけどォ、老いぼれを後々苦しめる為にしょうがなく言ってやったのですわァ、オホッ、オホホホホォ!」
本当に最悪過ぎだよわーおっ、俺と碧をこの世界に送ったヤツがこう変えたのならとんでもない性格してるよ。
『ふんぬ~~! 腐れ外道にも程があるわ~! もう許せない~!!』
わお!? TSガンが勝手に動いた!
【20話予告】
ふんぬ~、と分娩中みたいな声あげてTSガンを動かす碧。
そういえば友達に「ヒロインを銃にしたのは何かのメタファー?」と訊かれたけど何のこっちゃ。
スペスペ四天王が次回その能力を曝け出す、的なお話。
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