第10話 腹立つ魔王軍四天王をTSガンで撃ちました

 魔法防御がマイナス九百!?

 わおーっ! 千以上あるマドリーのHPが八十しかない瀕死状態ーー!

 何で? 何で何で? ってザルゥスふらふら立ち上がったぁ! 


「くそっ! こいつ、魔法が弱点ゴフッ! だったのか……もう一発食らわせて始末してもいいがグホッ! 直接この手で始末しないと気がすまねえ」


 やばいー! 俺の攻撃力じゃノーダメージだし、っていうか俺一回もバトルしてないし!


「お前の死体を俺様の体にしてやる。ゴハッ! い、いや、こいつ人間の女の姿をしてやがるから女ドラゴンか、グウッ! じゃあ止めだ! 踏み潰して内臓巻き散らかしてやる」


 んっ? こいつ今何て――いや、今はこれを試してみるしかない!


「ギジギジゴー!」


 擬人化アイでザルゥスを見る。

 おっ、ズタボロなムキムキ男性ゾンビ。

 むむぅ、俺の仮説が正しいとなると――


「TSガン!」

『ちょ、翼~!? 何? 何で撃つの~?』

「続き!」

『ご、GO~』


 銃口から赤と青が絡み合ったビームが飛んでいく。


「むっ!」


 それに気づいたザルゥスが避けようとするがそれは無理、狙ってトリガー引けばビームは当たるまで飛び続ける。


「ふぐぅっ!?」


 命中! 

 ムキムキ男性ゾンビから長身女性ゾンビになった。


「な? ん?」


 ザルゥスがしげしげと自分の身体を見る。


「うっ……ううっ……うわぁーー! 何だこれはっ、俺様の体が女になってるじゃねぇかぁー!」


 触りたくもないのか、自分の身体から思い切り手を放したカッコで絶叫。


「お、俺様が女の体の中にぃーー! ひぃー! 」


 女性ゾンビの口が上を向くと、そこから青白く光る何かがモゾモゾ出て来た。


「ひぃー! ひぃー! 俺は逞しい男の体が好きなんだっ、女の体の中なんて絶対嫌だっ、気が狂うぅー!」


 本体のゴースト系モンスターが出て来た、ヒゲっぽいのあるから男性なのだろう。

 こいつは撃つ、TSを散々言ったこいつは絶対撃つ。


「TSガン!……碧っ」

『え、うん、ご、GO~』

「ふぐぅ!?」


 TSビーム命中。


「わっ、わーー! 俺様がっ、俺様が女にぃーー!」


 飛んで行ったか、女性ゴーストとして生きていくがいい。

 っていうか死んでるんだった、まあいいや。

 それにしても――


「マドリーたーーーん! わあーーーーん」


 ミーシャちゃんが横たわるマドリーにすがりついて泣きじゃくってる。


「碧」

『わかってるわ~』


 ウィンドウから飛んできたハイポーションをキャッチ。

 こっちが何するかわかってるところが幼馴染だな。


「ハイポーションで回復させるから大丈夫だよ」


 マドリーの頭を持ち上げ口へ流し込んだ。


「ぶふぅなり!」


 むせたよ!? アニメだと普通に飲んでるのに。


     □□□


 マドリーを仲間に出来なければ始末せよ、という魔王の命令でやってきた四天王ザルゥス。

 そのザルゥスの攻撃で怪我をしたミーシャちゃんを前に魔王を倒す決意をするマドリー、という形で仲間になるのが本来の流れ。

 何で俺のシナリオと微妙に違いが出るの?

 ミーシャちゃんの部屋にあるマドリー直筆のイラストを眺めつつそう考えてると

「翼様」

 ミーシャちゃんが俺の前に座った。


「えっ、何?」

「TSをお願いします!」


 それにマドリーが飛び上がった、っていうか俺も飛び上がった。


「ちょ、何で? ミーシャちゃん男になりたいの?」

「あっ! いっけない、私じゃなくって……ほらクリス、入っていいわよ」


 って、ミーシャちゃんと洗濯物干してた男の子?


「宿に置いて消えたお客さんの子供で、わたしと一緒に育てられたの」


 恋が芽生えるしかないフラグ、ってかこんな設定作ってないんだけど。


「あたしは百合しか興味ないから、クリスには特別な感情はなかったわ。でも……」


 急に指刺した、ってマドリーの漫画本?


「マドリーたんの漫画貸したらすっかりクリスがハマちゃって、いろいろ話し込んでる内にあたしとその、恋仲になっちゃったのよーー! でも……あたし百合じゃなきゃその……深い関係になれないし」


 そこでTSガンを持った俺が来たって訳ね、いやまあそういう理由ならTSしてもいいけど、マドリーは――


「それがしの漫画がきっかけで恋人になるなんて嬉しいなり!」


 え?


「それがしからもお願いするなり、クリス殿をTSしてくださいなり」


 マドリーがこっちに笑み向けてるけど口の端がピクつてるよ。

 とはいえマドリーが決めた事、俺はクリスくんをクリスちゃんにTSした。


「ありがとーー! また来てねマドリーたーーーん!」


 手を振るミーシャちゃんとクリスちゃんの姿が見えなくなった所でマドリーがうずくまった。


「むほほー! ミーシャたーん!」

『な、泣かないでよ~マドリーちゃん』


 まさかのモブキャラに恋人取られましたEND、そんな事よりマドリーが可哀相過ぎる。


「マドリー」


 肩を叩いて両手を広げる。


「俺でよければ思い切り泣いていいよ」

「つ、翼殿ーー!」


 がっちりしがみ付いて来るマドリー、って胸の谷間に顔を思い切りすりすりしてくるから何か変な気分。


「む、む、むほ……むほ……」


 やっと落ち着いてきたよ。


「それがし、翼殿と一緒に行っていいなり?」


 え? これって俺のシナリオとは違うけどマドリーが仲間になる流れだよ、でもここはちゃんと言っておかないと。


「俺と碧は魔王を倒さなきゃいけない事情があるんだけど……」

「それがしでよければお手伝いするなり! だから一緒に行っていいなりか?」


 やった! マドリーを仲間に出来た~、って碧が顔近づけてきたよ。


『ねえねえ翼~、マドリーちゃんパーティーに入ってよかったわね~、これで魔王倒す目処がついたじゃない~』


 ん? 魔王を倒す? こいつは何を言ってるんだろう。


【11話予告】

 いや倒さなきゃダメだろ、お前こそ何言ってんの。

 ではなく、新たな仲間を求めて新章突入! 的なお話。

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